Research Abstract |
π受容性の高いジエン部位を持つテトラフルオロベンゾバレレン(tfb)を基本骨格とするキラル配位子とその金属錯体を合成し,その錯体を触媒とすることで達成される反応を開発した。まず,エステル基を置換基に持つキラルtfb配位子を新たに合成し,そのイリジウム錯体を触媒として用いると,アリールボロキシンがδ位にアリール基を持つ共役ジエノンへ高いエナンチオ選択性で1,6-選択的に付加することを明らかにした。この反応では,エステル基で置換されたtfb配位子が反応の進行に不可欠であり,従来の配位子では達成できなかった共役ジエノンの適用範囲を大幅に広げることが出来た。また,フェロセニル基を持つtfb配位子は,ロジウム触媒を用いたアリールボロキシンのβ-アルコキシアクリル酸エステルへの不斉1,4-付加反応にきわめて有効に働き,光学活性β-アルコキシ-β-アリールカルボン酸エステルを非常に高い収率,エナンチオ選択性で与えた.本反応で合成出来る化合物は,天然物や医薬品に多く見られる骨格をもち,それらを不斉1,4-付加反応によって合成した初めての例である。さらに,天然物から容易に合成出来るキラルジエン配位子を持つロジウム錯体を触媒とする光学活性トリアリールメチルアミンの合成を行った。本反応では,アリール置換環状スルホニルケチミンへのアリールボロキシンの付加反応により,3つの異なるアリール基で置換された不斉炭素中心を高いエナンチオ選択性で構築した初めての例である。また,生成物の環構造を還元的に切断することで光学活性トリアリールメチルアミンへと変換できることを明らかにした。一方,ジエン-ホスフィン三座配位子を新たに合成し,そのロジウム錯体を触媒とする1,6-エンインの不斉環化異性化反応を行った。本反応で用いられるロジウム錯体は,立体電子的に制御された金属部位とそれを取り囲む不斉場によって,高い触媒活性とエナンチオ選択性を発現することを明らかにした。また,コバルト触媒によるアルキニル化反応に関する研究も行い,ロジウムに代わる触媒の探索を行った。
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