2010 Fiscal Year Annual Research Report
金属中心自体が立体中心となる金属錯体の立体選択的合成とその不斉触媒作用
Project/Area Number |
22750095
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 和弘 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (40512182)
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Keywords | 合成化学 / 不斉反応 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つである金属中心自体が立体中心となる金属錯体、いわゆる"chiral-at-metal complex"の立体選択的合成法の開発について、主に金属サラレン錯体についての検討を行った。その結果、アミノ酸の一種であるプロリンより簡便に合成できるC1対称サラレン配位子を有するジオキソモリブデン錯体が良好な立体選択性で得られることを見出した。また、この錯体は過酸化水素水を酸化剤に用いたスルフィドの不斉酸化反応を円滑に触媒し、かつ良好なエナンチオ選択性を示した。これに対し、従来用いてきたC2対称サラレン配位子を有するジオキソモリブデン錯体を立体選択的に合成することはできず、なおかつほとんど不斉誘起を示さなかった。このことは、金属中心における立体化学を制御することの有用性、今回用いたプロリンより合成したサラレン配位子の有用性を示す重要な知見である。 また、従来用いてきたC2対称サラレン配位子を有するアルミニウム-サラレン錯体は立体選択的に得られることが知られていたが、今回この錯体が環状チオアセタールの不斉酸化反応の触媒として極めて高いジアステレオおよびエナンチオ選択性を示すことを見出した。また、バナジウム-サラレン錯体がアルデヒドとアセトンシアノヒドリンとの反応を円滑に触媒し、室温においても無保護のシアノヒドリンを高エナンチオ選択的に与えることも見出した。これらの成果については、学術論文および学会にて発表を行った。
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