2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属中心自体が立体中心となる金属錯体の立体選択的合成とその不斉触媒作用
Project/Area Number |
22750095
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 和弘 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (40512182)
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Keywords | 合成化学 / 不斉反応 / 酸化反応 |
Research Abstract |
本研究課題は、金属中心自体が立体中心となる金属錯体、いわゆる"chiral-at-metalcomplex"の立体選択的合成法の開発とその錯体を触媒として用いた不斉反応の開発を主たる目的としている。前年度研究により、軸不斉を有するC_3対称NO_3三脚型配位子を設計し、この錯体が分子全体でプロペラ型の不斉を誘起することを利用した不斉反応の開発を進めてきた。本年度研究では、上記の不斉配位子をさらに改良することで、その配位子を有するハフニウム錯体が過酸化水素を酸化剤に用いたオレフィンの不斉エポキシ化を高エナンチオ選択的に触媒することを見出し、90%eeを超える高いエナンチオ選択性が得られることを確認している。また、同様の配位子を有する他の金属錯体についても検討を行っており、良好な立体選択性が発現することも見出している。 一方、安価で環境調和性の高い過酸化水素を酸化剤に用いることのできる不斉酸化反応の開発を念頭に、新規不斉触媒の合成研究も行った。このうちONO直線型三座配位子を有する新規タンタル錯体が過酸化水素水を酸化剤に用いたオレフィンの不斉エポキシ化を高エナンチオ選択的に触媒することを見出している。本エポキシ化では、共役オレフィンの反応において90%eeを超える高いエナンチオ選択性が得られているほか、現在でも高いエナンチオ選択性を得ることが困難である脂肪族オレフィンの不斉エポキシ化においても良好なエナンチオ選択性が得られており、今後有望な触媒系となることを期待している。 また、従来から用いてきたチタン-サラレン錯体がエノールエステル類の不斉エポキシ化反応の触媒としても有用であることを見出した。本エポキシ化では、従来法では得ることの難しかったエポキシドを高収率かつ高エナンチオ選択的に得ることができる。この研究成果については、雑誌論文および学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来から用いてきた金属錯体触媒の新たな活用法を見出したほか、有望な新規不斉触媒を複数開発することに成功した。新たに開発した新規触媒のうち、すでに2つの系において90%eeを超える高いエナンチオ選択性が発現することを確認している。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究において複数の新規不斉触媒の開発に成功し、このうち2つの系において90%eeを超える高いエナンチオ選択性が得られることを確認している。今後の研究では、これらの不斉反応の基質適用範囲や反応機構の解明などを進めるとともに、新たな不斉反応への応用も視野に入れた研究を推進する。
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