2010 Fiscal Year Annual Research Report
不斉鈴木‐宮浦反応を高効率に実現するπ系不斉分子触媒の開発研究
Project/Area Number |
22750097
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
岩澤 哲郎 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (80452655)
|
Keywords | 不斉クロスカップリング / 軸不斉ビアリール / 不斉触媒 / 不斉ホスホナイト化合物 |
Research Abstract |
本研究では、不斉鈴木-宮浦反応を従来の報告例よりも短い反応時間と高い触媒回転数を持って達成することを目的としている。この課題の意義は、軸不斉を持つ光学活性ビアリールが合成化学、医薬品化学、材料化学、超分子化学等々の各分野において、極めて重要な価値を持つことが既に知られているからである。それにもかかわらず、軸不斉ビアリールを安価で大量、そして安全かつ高品質に供給する合成技術が未だ確立されていない。ただ学術レベルで高い不斉収率が達成されているだけである。この点において本研究課題が仮に上手くいった場合、これら諸分野に対する波及効果は絶大である。本申請研究では、この課題を達成するために、π系分子構造と単座不斉分子構造を併せ持った不斉ホスホナイト配位子の開発に着手した。用いた不斉分子構造はバイノール骨格である。その結果、ある種のバイノール誘導体を使用した場合、2位と6位にそれぞれメトキシ基と環状アセタール基を有する芳香族塩化物とオルトトリルホウ酸を用いたパラジウム触媒による不斉カップリング反応が、触媒量0.1モル%、反応時間わずか4.5時間で75%収率、76%eeの結果を与えた。また、触媒量0.5モル%の場合は反応時間わずか4時間で91%収率、78%eeの結果を与えた。過去の報告例では触媒量は通常10モル%、反応時間24時間から48時間が一般的であった。これら過去の例と比較すると、我々の触媒系は、触媒量の点でおよそ100倍の効率化、反応時間の点でおよそ6から12倍の効率化を達成することができた。不斉収率を挙げていくことが今後の課題である。
|