2011 Fiscal Year Annual Research Report
シリコーン骨格ポリロタキサンにより環動性を有する有機-無機ハイブリッド材料の創製
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22750099
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 和明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任助教 (80570069)
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Keywords | 超分子化学 / 自己組織化 / 有機・無機複合材 / ポリロタキサン / 環動性 |
Research Abstract |
有機-無機ハイブリッド環動高分子材料は、有機成分と無機成分の相対的な位置が変化しうる革:新的な材料と期待されるが、各成分の分布や相対的な位置変化のダイナミクスは、材料物性を支配する基本的な情報として重要である。22年度の研究を通して、前駆体であるポリロタキサン(主鎖がポリジメチルシロキサン(PDMS)、環状分子がガンマーシクロデキストリン(gamma-CD))が塩化リチウムを含むDMF中で、直径200nm程度の凝集構造を形成するとともに、.一桁ほど小さい凝集体も共存することが示された。23年度は、中性子散乱で得られた散乱プロファイルを様々な構造因子でフィッティングを行ったところ、小さい方の凝集体は、直径20nm程度の球状構造であることが示唆された。また、この溶液を基板上にキャストし、乾燥状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、直径20nmの球状の凝集体が、さらに凝集体間で凝集することで200nm程度の球状構造を形成していることが明らかとなった。また、この20nmの球状凝集体に中空構造は観測されなかった。この階層的な凝集構造の形成は、両親媒性のテレケリック高分子に見られる構造形成と似ているため、ポリロタキサンは疎媒性であるPDMSをコアとし、新媒性であるgamma-CDが表面を覆ったミセル構造であると考えられる。さらに、このポリロタキサンの合成研究の過程で、ポリブタジエン骨格を有するポリロタキサンが初めて合成されたが、これを架橋して得られる環動高分子材料の粘弾性測定から、ゴム状態からさらに別の低弾性状態への粘弾性緩和が初めて観測された。この緩和時間は、架橋点を通して拡散する部分鎖のダイナミクスを表しており、本研究課題の対象であるハイブリッド環動高分子材料においては、各成分の相対的な位置変化のダイナミクスに対応するため、この緩和現象について詳細を調べることは重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
構造解析が順調に進んでいることに加えて、研究の構想段階では知られていなかった「スライディング転移」を発見することができ、本研究で対象とする有機-無機ハイブリッド材料の新たな可能性が示されたため。つまり、これまで考えられてきた、有機成分と無機成分の相対的な位置変化に加え、既存の材料にはないエントロピー弾性を有することもこの材料に特異的であり、さらに革新的な材料設計が可能になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
構想段階での目的に向けて、環動性に由来する静的物性を調べて材料化を行うとともに、新たに粘弾性測定等によって、動的物性についても詳細な研究を行う予定である。さらに、この材料が持つ特異な弾性について、その分子的な起源を調べることによって、材料設計の指針を明確にする。
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