2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 倫太郎 京都大学, 化学研究所, 助教 (80563840)
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Keywords | 高分子薄膜 / ガラス転移温度 / 中性子反射率 |
Research Abstract |
高分争薄膜は濡れ・接着などの特性を生かして非常に多岐の分野で応用されているが、近年の精力的な研究によりバルクと大きく異なる性質を示すことが明らかとなってきている。その特異物性の原因として高分子薄膜の表面・界面近傍の特異物性に由来すると考えられているが、特に界面近傍の物性のみを正しく評価する手法はほとんど確立していないためその評価方法確立が強く求められている。そこで、我々は高分子薄膜の基板界面近傍のガラス転移温度等の物性値がどのように変化するかを調べるために、表面の影響を十分に無視できる程の膜厚の軽水素化ポリスチレンと膜厚を変化させた基板上に直接成膜された重水素化ポリスチレンを二層積層した薄膜を作成し中性子反射率法により評価することを試みた。本手法の利点は重水素化ポリスチレンの膜厚を変化させることは基盤との距離を変化させることを意味するので直接重水素化ポリスチレン層の物性を評価することで直接薄膜基板界面物性を見積もることが出来る。重水素化ポリスチレン層の膜厚が50nm以上ではバルクのガラス転移温度と実験誤差範囲内で一致した。しかしながら、50nm以下になると急激にガラス転移温度が上昇し、20nm以下の膜厚になると測定温度範囲外にまでガラス転移温度がシフトした。また、20nm以下になると極めて小さい熱膨張係数や拡散定数しか観測されなかったことより、膜厚が低下すると薄膜界面近傍では運動性が極めて低下することを直接的に明らかにすることに成功した。上述したように高分子薄膜の物性は、表面・界面近傍の特異物性により大きく支配されるため二つの相互作用の兼ね合い(例えば、基盤からの距離や相互作用等)を考慮することのみで自在に高分子薄膜物性の精密制御の可能性を示すことが出来たと言える。
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