2011 Fiscal Year Annual Research Report
構造-機能相関に基づいた新規フェナレニル系分子性導体の開発
Project/Area Number |
22750129
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平尾 泰一 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50506392)
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Keywords | 分子性導体 / π共役系 / 構造有機化学 / 有機ラジカル / スピンラダー |
Research Abstract |
本研究課題は、分子性導体において従来にない新たな分子配列の構築を狙い、その構造的特徴から新たな機能を生み出すこと(構造-機能相関の発現)を目的とした。特に「らせん」配列や「スピンラダー」配列の構成ユニットとなるような分子の設計・合成に注力した。これらの特異な配列を達成するためには、分子配列を積極的に制御する必要がある。そこで強い自己凝集能を示し、かつ規則正しく配列することで知られるフェナレニルを骨格内に複数個持つような化合物群に注目した。昨年度は「らせん」配列の発現を狙った分子について研究を行った。そこで今年度はもう一方の「スピンラダー」配列の構築を目指した。新たに設計した化合物は2つのフェナレニルをas^-タインダセンによって架橋したものであり、この分子を結晶中で真上に積み重ねることで、分子内および分子間で反強磁性的相互作用が働くスピンラダーの形成が期待できる。全15段階の合成を経て目的物を単離することに成功した。得られた化合物について電気化学的測定、吸光スペクトル、および電子スピン共鳴から電子構造を調べた。特に磁化率測定からは、分子内の2つのフェナレニル間に反強磁性的相互作用が働き、その大きさが-165Kであることを明らかにした。こうした基礎的な知見はスピンラダーを構築していくうえで有用である。今後は得られた化合物を用いて目的の分子配列の構築(結晶化)を実施し、物性測定を行っていく。最終的には分子構造とその配列構造、さらには固体電子物性を総合的に考察し、それらの相関について明らかにしていく予定である。
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