2010 Fiscal Year Annual Research Report
低パワー非コヒーレント光による有機非線形吸収の実現と調光材料への応用
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22750132
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平田 修造 九州大学, 最先端有機光エレクトロニクス研究センター, 特任助教 (20552227)
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Keywords | 励起三重項 / ステロイド / 逆過飽和吸収 / オプティカルリミット / 常温リン光 / 重水素化 / 金属錯体 / 光増感 |
Research Abstract |
逆過飽和吸収は、材料の励起状態が蓄積された際に、励起状態の吸収が基底状態の吸収よりも強いことに由来して生じる現象である。従来この現象は、高密度の励起状態の形成が必要となるために、瞬時強度の強いパルスレーザー(瞬時パワーはGW/cm^2)が照射された時のみ生じる現象として知られていた。 申請者は、ヒドロキシステロイド中に重水素化芳香族化合物をドープすると、重水素化芳香族化合物の励起状態の熱失活が抑制され、常温で1秒以上(通常の100万倍以上)の長い励起状態寿命が達成されることを見出していた。そして、この室温大気下での長い励起状態寿命を利用すれば、より弱い励起光で高密度の励起状態を蓄積させることが可能になり、発光ダイオードや太陽光などの弱い光で逆過飽和吸収を実現することが可能であると考えた。 申請者は、効率よく長寿命の励起状態を作製可能な材料系として、Ir錯体やPt錯体を増感剤として、重水素化芳香族化合物をアクセプターとして、ヒドロキシステロイド中にドープした材料系を提案し、照射光強度に対する材料の透過率変化を測定した。 材料の弱い吸収に相当する青色(400nmから470nm)の波長領域の光を照射すると、数mW/cm^2レベルのパワーでも材料の吸光度が増大する非線形吸収材料の構築に初めて成功した。この非線形吸収現象発現の閾値は、従来の材料の100万分の1と非常に小さなものである。次に、この材料を用いて厚さ100μmの調光素子を作製したところ、光強度が0,1mW/cm2の条件下では60%の透過率を示したが、1mW/cm2レベルの光強度から透過率が大きく減少し始め、100mW/cm2の強度では10%以下となった。 このような材料は、レーザーポインターから目を守るための用途に用いることが可能である。
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Research Products
(6 results)