2011 Fiscal Year Annual Research Report
低パワー非コヒーレント光による有機非線形吸収の実現と調光材料への応用
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22750132
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平田 修造 九州大学, 最先端有機光エレクトロニクス研究センター, 特任助教 (20552227)
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Keywords | 光制限効果 / 逆過飽和吸収 / 励起状態 / 励起状態寿命 / 光増感 / ステロイド / エネルギー移 / 重水素化 |
Research Abstract |
過飽和吸収現象とは、照射光強度が強くなると材料の吸光度が増加する現象である。この現象は、光照射によって蓄積された励起子の吸光係数が基底状態の吸光係数よりも十分大きくなることで生じる。しかし、通常有機物の過飽和吸収現象は、有機物の励起状態寿命が室温大気下で短いために、YAGレーザーなどの瞬時強度が強い光パルスを照射することで、瞬間的に励起子を蓄積させた場合のみ生じると言われてきた。 研究代表者は、LEDなどの低パワー且つ非コヒーレントの光照射により、室温大気中で透過率が大きく減少する材料(低閾値の逆過飽和吸収材料)の開発に成功した。この材料では、二種類のゲスト化合物を非晶性のステロイドホスト化合物にドープすることで作製される。一種類目のゲスト化合物は、光増感剤のための金属錯体(ドナー)であり、もう一種類のゲスト化合物は長い三重項励起状態寿命を示す重水素化芳香族化合物(アクセプター)である。この材料では、ドナーから光増感により、高効率でアクセプターの長寿命の三重項励起子が形成された。結果的に、1mW/cm^2以下のパワー域での逆過飽和吸収現象が確認された。 この逆過飽和吸収材料をガラス基板で挟み込んだ青色の波長域で60%の透過率を示す調光素子を作製した。この調光素子は、青色光の光照射強度を1mW/cm^2以上に強めていくと透過率が減少していき、1W/cm^2の光強度の際に6%以下までに透過率が減少した。 このような非コヒーレント光による非線形光学現象は初めての報告である。本成果は、吸収が非線形的に変化するものであるが、励起子の蓄積によって、屈折率やスピン状態の変化を非線形的に誘起できる可能性もある。そのため、本成果は、今後の新しい非線形光学材料および素子の構築の土台になる可能性を秘めているものとして期待される。
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