2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750134
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
小泉 拓也 神戸市立工業高等専門学校, 応用化学科, 准教授 (90435438)
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Keywords | 二次電池 / 有機正極活物質 / 充放電反応 / フェナジン5,10-ジオキシド |
Research Abstract |
エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発をめざして、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行った。より充放電容量の大きい有機電池材料の候補としてフェナジン5,10-ジオキシド(1)の合成を行い、充放電測定を行った結果、充放電容量はリチウムイオン電池の理論容量(150Ah/kg)を遥かに超え(250Ah/kg)、300回充放電を繰り返しても減少ることなく、維持するという結果を得た。また、その充放電速度はリチウムイオン電池に比べて10倍以上速いことを明らかにした。加えて、興味深いことに高温下(45℃)で繰り返し充放電試験を行った際、500回以上充放電を繰り返しても容量減少は見られず、むしろサイクル数の増加とともに容量は増加し、・理論容量(252.6Ah/kg)に比べて遥かに高い容量(仕込み1当たり>800Ah/kg)を示すことを明らかにした。そこで、充放電後のセルを分析した結果、充放電初期のセルからはフェナジン(2)が定量的に得られ、さらに充放電を繰り返したセルからは2とともにN,N'-ビス(エトキシカルボニル)-5,10-ジヒドロフェナジン(3)が得られた。このことから、充放電過程において1は2へと還元を受け、この2はさらなる還元を受け、5,10-ジヒドロフェナジン(4)を経由後、4が電解液であるジエチルカーボネートと反応して、3を与えたと考えられる。また、充放電を繰り返したセルを分析した結果、一部ポリマーらしき化合物の生成を確認しているが、3が充放電反応中にポリマー化し、オキサミド型ポリマー5が生成していると考えられる。そこで、4を別途合成し、塩化オキサリルとの反応により、オキサミド型ポリマー5の合成を行い、合成したポリマーの充放電測定を行った。その結果、放電容量が約200Ah/kgであり、ポリマー5は目的としていた高容量密度化合物ではないと考えられる。しかし、200Ah/kgという放電容量は1が初期の充放電で変化した化合物の放電容量の値と一致しており、もし高温条件下での充放電の繰り返しにより容量の増加が見られれば、ポリマー5は高容量化のはじまる前の中間体である可能性が高いと考えられる。
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