2011 Fiscal Year Annual Research Report
可視光照射により酸化反応を触媒する太陽光駆動型オキシダーゼの開発
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22750152
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田井中 一貴 独立行政法人理化学研究所, 合成生物学研究グループ, 研究員 (80506113)
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Keywords | 正孔輸送リレーユニット / オキシダーゼ / 補酵素 / ピロロキノリンキノン / グルコースデヒドロゲナーゼ / Ru(II)錯体 |
Research Abstract |
『光捕集-正孔伝達-酸化反応』の一連のシステムを構築するにあたって、1)太陽光を捕集する「光アンテナ」、2)発生した正孔を失活させることなく酵素の活性中心まで伝達する「正孔輸送リレーユニット」、3)輸送された正孔により活性中心が再酸化されることで酸化反応を触媒的に促進する「オキシダーゼ」、以上の素子を機能統合した分子集合体をどのように設計するかが重要な課題となる。オキシダーゼにおいて、正孔受容体となる活性中心をリレーユニットと連結するように設計することができれば、光アンテナから伝達される正孔を効率よく酸化反応に利用できると考えられる。補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)は、酸化体・還元体それぞれが化学的に安定であり、酵素の活性を損なうことなく化学修飾を行う設計が可能である。PQQを活性中心とするオキシドレダクターゼの中で、可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ(sGDH)は、触媒反応機構についても詳細な知見が得られているため、PQQ依存型sGDHを本モデルシステムにおけるオキシダーゼとして用いることとした。昨年度は、Ru(II)錯体を「光アンテナ」、DNAを「リレーユニット」として設計したRu(II)錯体修飾DNAが、可視光照射により連続的かつ方向性をもった正孔輸送を誘発する「光アンテナ-リレーユニット」複合体として機能することを実証した。そこで本年度は、PQQをDNAの末端に導入し、『光アンテナ-正孔輸送リレーユニットー活性中心』から構成される光化学反応中心の作製を目指してPQQ修飾DNAの作製を行った。アミノリンカーを有する修飾DNAに対して、HBTU存在下PQQと反応させた後、ゲル電気泳動により精製を行った。UV測定から338nm付近にPQQに特徴的な吸収帯が観測されたこと、MALDI-TOFMSにより目的分子量が観測されたことから、PQQ修飾DNAの生成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書において、平成22年度にDNAを構造基盤として可視光増感により正孔輸送を誘発するリレーユニットの作製し、平成23年度にDNAを経由した正孔輸送による補酵素PQQH_2の酸化反応を誘発する光化学反応中心の作製することを計画していた。これまで予定通りDNAが正孔輸送リレーユニットとして機能することを実証し、DNAに補酵素であるPQQを導入する事に成功しているため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作製したPQQ修飾DNAと昨年度作製したRu修飾DNAを用いることで、『光アンテナー正孔輸送リレーユニット-活性中心』から構成される光化学反応中心の作製を試みる。また、作製した光化学反応中心とアポ酵素sGDHとの複合体を構築し、光照射時における酵素活性の評価を行う。DNA内における正孔は、核酸塩基のπスタックを経由して輸送されるため、酵素内部に結合したPQQH_2への正孔伝達効率の低下が懸念される。そこで、グアニンよりも酸化されやすく、核酸塩基とのπスタックによりDNA内の正孔輸送の媒体となるトリプトファン等のメディエーターをDNAとPQQH_2の間に挿入することで、PQQH_2への正孔伝達効率の改善を試みる。
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Research Products
(3 results)