2011 Fiscal Year Annual Research Report
インターエレメント化学の要素を取り入れた金属タンパク質デザイン
Project/Area Number |
22750156
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松尾 貴史 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50432521)
|
Keywords | インターエレメント / タンパク質デザイン / 白金錯体 / 触媒反応 |
Research Abstract |
本年度は、「インターエレメント」(元素間の相互作用)とタンパク質の構造的特徴に基づく機能発現を目指した金属タンパク質デザインを行うために、2つの研究テーマを進行させた。 π系配位子を有する白金錯体は、2分子が近づいた際、Pt-Pt間の相互作用により発光スペクトルが変化する。また、アデニル酸キナーゼは、基質を結合する際に大きな構造変化を示し、Vall69とAla55間距離が18オングストロームも変化する。そこで、これらの2つの残基をシステインに変換させたアデニル酸キナーゼ変異体を作成し、ターピリジンとN-(4-エチニルフェニル)-2-ヨードアセトアミドが配位した白金錯体をタンパク質表面にコンジュゲートした。変異体タンパク質はアミノ酸を変換させても、本来の酵素活性(ATP-ADP間のリン酸基転移)を保持していた。また、白金錯体のコンジュゲートにおいては、バッファーおよび添加する助溶媒を検討した結果、2%のアセトニトリルを含むリン酸緩衝液中が最も効率よく白金錯体を導入できることが分かった。調製したタンパク質発光スペクトルにおいて、阻害剤であるAp5Aを添加したところ、スペクトルのシフトが観測された。このことは、阻害剤の結合に伴い、2分子の白金錯体が互いに接近したことを示しており、分子設計の妥当性が示された。 次にサブチリシン活性部位のセリン残基を選択的にシステインに変換させた「チオールサブチリシン」を調製し、サブチリシン活性部位において、システイン配位Cu^<2+>錯体の構築を行った。EPRにより、配位構造がType-2であることが分かり、また、吸収スペクトルおよびEPRにより、自動還元が起こることが分かった。このことは、チオールサブチリシン内で、酸素分子の活性化および触媒反応への応用の可能性を示しており、元素間相互作用に基づく、タンパク質機能の変換という観点で興味がもたれる実験データが得られた。
|