2010 Fiscal Year Annual Research Report
高い配向性を持つチオフェン縮環フタロシアニン類の開発と有機薄膜デバイスへの応用
Project/Area Number |
22750171
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮碕 栄吾 広島大学, 大学院・工学研究院, 助教 (00432683)
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Keywords | フタロシアニン / 有機半導体 / 有機薄膜デバイス |
Research Abstract |
本研究では、フタロシアニン(Pc)類の有機電界効果トランジスタ(OFET)素子における特性向上を目的として、チオフェン縮環ポルフィラジン(Tc)を共役拡張したベンゾチオフェン縮環ポルフィラジン(BTc)のドデシル誘導体の合成検討を行った。1,2-ジシアノ-4,5-ジブロモベンゼンを出発原料として、薗頭カップリング反応によりドデシルエチニル基を導入した後、硫化ナトリウムと反応させることにより前駆体であるジシアノベンゾチオフェン誘導体へと導いた。最後にマグネシウムペンタノキシドを作用させることにより、目的とするドデシルBTcのマグネシウム錯体を合成した。 ドデシルBTcのマグネシウム錯体はクロロホルム、トルエン等の有機溶媒に対して可溶であり、スピンコート法等の溶液法により有機薄膜作製に必要な溶解度を有していた。クロロホルム溶液を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に有機薄膜を作製後、ソース、ドレイン電極を真空蒸着し、トップコンタクト型OFET素子を作製した。大気下遮光下室温でOFET素子を評価したが、素子はトランジスタ特性を示さなかった。その原因を明らかにするために、有機薄膜の分子配向をX線回折測定により評価した結果、ドデシルBTcのマグネシウム錯体薄膜は回折ピークを示さなかった。作製した有機薄膜はアモルファスであることが示唆され、そのためにOFET素子においてトランジスタ特性を示さなかったと推測される。以上、本研究では目的とするアルキルBTcの合成法を確立し、そのOFET素子の予備的評価を行うと共に有機薄膜に関する重要な知見を得た。
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