2011 Fiscal Year Annual Research Report
高い配向性を持つチオフェン縮環フタロシアニン類の開発と有機薄膜デバイスへの応用
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22750171
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮碕 栄吾 広島大学, 大学院・工学研究院, 助教 (00432683)
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Keywords | フタロシアニン / 有機半導体 / 有機薄膜デバイス |
Research Abstract |
本研究では、チオフェン縮環ポルフィラジンおよびその共役拡張分子を合成し、その構造・物性を調査することを目的としている。今年度はアルキルチオフェン縮環ポルフィラジン(アルキルTc)、ならびにアルキルベンゾチオフェン縮環ポルフィラジン(アルキルBTc)の銅錯体を合成し、それらを用いた各種有機薄膜トランジスタ(OFET)の作製・評価を行った。 金属錯体の合成:アルキルTc、ならびにアルキルBTcの各種銅錯体は、対応する無金属体を出発原料として用い、対応する銅塩と反応させることにより得られた。合成した各種銅錯体について可視紫外吸収スペクトル測定を行い、いずれの化合物でも700nm付近にQバンドが観測され、その最大吸収波長はアルキルTcと比較するとアルキルBTcでは30nm程度長波長領域に観測されたことから、共役が拡張していることが分かった。また、サイクリックボタンメトリ(CV)測定により二段階の酸化・還元波が観測され、両性の性質を示すことを見出した。さらに、CV測定より見積もられたアルキルTcおよびアルキルBTcのHOMO,LUMO準位を比較すると、LUMO準位はほぼ同じであるが、HOMO準位が高くなっていた。これらの結果から、チオフェン縮環系フタロシアニン(Pc)類における分子の共役拡張の影響が明らかとなった。 OFETの評価:合成したPc類の半導体特性を明らかにするために、それら薄膜を用いた有機デバイスとしてトップコンタクト型OFETを作製し、特性評価を行った。アルキルTc,アルキルBTcではいずれもp型特性を示し、アルキルTcでは移動度が~0.3cm^2V^<-1>s^<-1>、アルキルBTcでは10^<-2>cm^2V^<-1>s^<-1>であった。これらの結果は、Pc類においては単純な共役拡張ではデバイス特性の向上につながらないことを示唆しており、有機半導体開発において重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするπ共役拡張分子の金属錯体の合成に成功し、OFETデバイスの評価にも着手できていることから、予定通りの進度で研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は残っている研究課題である有機薄膜太陽電池の作製・評価を行うとともに、金属錯体においてはまだ銅錯体のみ扱っているため他の錯体についても検討する。また、各種錯体の単結晶X線構造解析についても同時に検討する。
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