2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一イオン照射による刺激応答性高分子1次元ナノ構造体の形成と制御
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22750194
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佃 諭志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00451633)
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Keywords | ナノワイヤー / イオンビーム / 刺激応答性高分子 / 架橋反応 / ゲル化 / 架橋剤 |
Research Abstract |
高分子薄膜へのイオンビーム特に単一のイオン照射は、単一イオンの飛跡に沿ったイオントラック内での架橋反応を引き起こし、円柱状のナノ構造体(ナノワイヤー)を形成する。本研究課題においては、外界の変化(温度、pH、光など)に対して可逆的にゲルの体積を変化させる刺激応答性の高分子を照射対象とし、刺激応答性高分子薄膜への単一イオン照射を行うことにより、1)外部場応答性ナノワイヤーの形成,2)精密なサイズ制御による体積変化の制御,3)多ブロック化の展開を含めた新機能創成をそれぞれ達成し、薬学、医学分野への有用な材料として応用を図る。平成22年度においては、従来、形成が困難であった刺激応答性高分子でのナノワイヤー形成を、架橋剤の添加し、照射時の反応を促進させることにより、安定なナノワイヤーの形成に成功している。平成23年度においては、上記ナノワイヤーのサイズ・数密度制御を試み、イオンビームのイオン種、エネルギー、照射量、及び、成膜する高分子の膜厚等の条件を変えることにより、完全に長さ・数密度を制御する手法を確立した。この技術の確立により、数nm~数μmの広い範囲で精密なサイズ制御が可能となり、各種応用材料の用途に適したサイズのナノ構造体を提供できる。また溶媒中で上記ナノワイヤーは膨潤し、体積膨張が起こる。そこで、上記制御法により複数の長さを持つナノワイヤーを作成し、各長さでの膨潤挙動を観察した結果、すべての長さにおいて一定の膨潤率を示すことを見出した。この数値を解析することにより、形成されたナノワイヤー中の架橋網目構造が長さ方向に関して一定の分布を持つことが判明し、導入される架橋点の密度を制御することにより、ナノワイヤーの膨潤率を制御できることが提案された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度でナノワイヤーの安定化、平成23年度でサイズ制御及び膨潤挙動の解析と申請時に挙げた年度目的を達成している。特に平成23年度前半は震災の影響もあり進行状況は芳しくなかったが、23年度後半において、架橋反応点と膨潤率の相関関係見出したことにより、ナノワイヤーの膨潤挙動の制御という年度目標を達成するに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成22、23年度の年度目標はおおよそ達成し、順調に研究は進行しているので、平成24年度は、多層膜照射による多ブロックナノシステム構造体の創製を試み機能性材料への展開を予定通り目指す。前年度までの成果を基盤に新たに異種材料を組み合わせた多層膜の作製が重要となる。多層膜の作成は、高分子の溶解性の違いを利用したスピンコート法により行う。現在、ナノ構造体の形成に成功している高分子の多くは、ポリスチレン、ポリシラン、ポリチオフェンなどの非極性溶媒に溶解する高分子であり、本申請で取り入れる刺激応答性の高分子材料の多くは、極性溶媒溶解性であり、スピンコート法を利用した多層膜作成の組み合わせが取りやすい。研究期間内で想定している組み合わせは、2~3層を想定している。
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Research Products
(6 results)