2010 Fiscal Year Annual Research Report
環状オレフィン系非晶高分子フィルムの逐次2軸延伸過程における分子配向挙動の解明
Project/Area Number |
22750200
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宝田 亘 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (50467031)
|
Keywords | フィルム / 2軸延伸 / 分子配向 / 非晶高分子 |
Research Abstract |
本年度は環状オレフィンコポリマー(COC)フィルムの1軸延伸過程における応力および複屈折の変化を、様々な延伸温度と延伸速度において詳細に測定した。その結果、COCフィルムの延伸過程における延伸挙動および構造形成挙動について、下記の事が明らかとなった。 1.延伸温度が十分に高い場合、延伸応力と複屈折は緩やかに上昇する。これは変形がゴム的であり、複屈折は応力光学則に従って生じている。 2.延伸温度がTgに近い場合、延伸初期に大きな延伸応力の上昇が見られる。その一方で複屈折は緩やかに上昇する。これは、プラスチック的な変形とゴム的な変形の組み合わせからなることを示しており、プラスチック的な変形で発生する初期の大きな応力はほとんど複屈折の生成に寄与せず、ゴム的な部分の応力と複屈折が比例し、その比例定数は1の応力光学係数と等しい。 3.延伸温度がTgに非常に近く、延伸速度が速い場合、延伸初期に2より大きな延伸応力が発生する。その一方で複屈折は2よりも小さくなる。これは、この条件における変形が単純なプラスチック的な変形とゴム的な変形の組み合わせではなく、第3の変形成分が存在することを示している。 以上の結果のうち、1および2はこれまでにポリスチレン等の他の非晶性高分子で観察された結果と同様な結果であったが、3で示された第3の変形成分は、他の非晶性高分子では見られていないCOC特有の現象である。これはCOCの分子構造を反映している可能性があり、そのメカニズムを解明し制御手段を開発することができれば、液晶ディスプレイなどに使用されている位相差フィルム等の光学機能性フィルムの設計・製造に大きく寄与することが可能と考えられる。
|