2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松宮 由実 京都大学, 化学研究所, 助教 (00378853)
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Keywords | レオロジー / 誘電緩和 / 多成分液体 / 表面 |
Research Abstract |
誘電的手法の解析に関して基礎となる線形誘電応答の多重表現について検討した。線形刺激応答理論の枠組内では、物質の誘電応答は,複素誘電率ε^*(ω)または複素誘電モジュラスM^*(ω)(=11ε^*(ω))で記述される。現象論的にはε^*(ω)とM^*(ω)は等価であり、誘電緩和時間はそれぞれの量に対して定義される。本研究では、1)主軸に対して平行な永久電気双極子を有する(剛直棒状/屈曲性)分子,2)イオン伝導機構,のそれぞれの場合についての、ε^*(ω)とM^*(ω)の表現について検証した。1)の場合,誘電緩和は分子の末端間ベクトルの配向記憶の消失を反映する。従ってε^*(ω)の緩和時間は分子運動の特性時間と直接対応づけられるのに対し,M^*(ω)の緩和時間は分子運動の特性時間と直接対応関係がないことを示した。同様に、2)の場合には、電極分極現象のε^*(ω)の誘電特性時間がイオンの易動度と数密度に依存すること、また誘電強度がイオンの数密度と比例することを示す一方で、M^*(ω)の特性時間と強度にはそのような依存性が無いないことを示した。 このように、本研究で対象としたいずれの系においても、誘電緩和に反映される遅い分子運動過程を直接反映する緩和時間は、M^*(ω)ではなくε^*(ω)について定義されていることを示し、遅い分子運動を考察する上で、ε^*(ω)の優位性を明らかにした。これは粘弾性における複素剛性率G^*(ω)と複素コンプライアンスJ^*(ω)の関係と同様であり、通常、遅い分子運動過程を反映する基礎量としてはG*(ω)が用いられている。特に分子運動を検討する際には、G^*(ω)との対比が容易に行える点でも、ε^*(ω)の優位性が結論づけられる。
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Research Products
(13 results)