2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリエステル類のシシ構造形成におけるエステル交換反応を介した絡み合い解消の役割
Project/Area Number |
22750206
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 慎一 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (40397873)
|
Keywords | ポリエステル / 結晶化 / 流動 / シシケバブ / エステル交換反応 / 絡み合い |
Research Abstract |
[緒言]高分子の成形加工において最も広く用いられている流動場において結晶化を行うと、繊維状結晶(シシケバブ構造)が生成することは古くから知られている。このシシケバブ構造の中心部(シシ)は、分子鎖が繊維軸方向に伸びきって配列した伸びきり鎖結晶であり、高強度かつ高融点(高耐熱性)という優れた性質を持っており、超高強度繊維やナノファイバーコンポジットなどへの応用が展開されている。本研究の目的は、シシ構造の生成には必要不可欠であるが、成長には阻害要因となる高分子鎖の「絡み合い」が、ポリエステル類特有のエステル交換反応を介して解消されるときに、シシ構造形成にどのような影響を及ぼすのか、その分子論的実体解明を行うことである。本年度はその目的達成の第一歩として、繰り返し流動結晶化によってどれだけシシ構造生成が減少するのか定量的に見積り、エステル交換反応を介した絡み合い解消がどの程度起こっているのか明かにすることとした。 [実験]試料には研究代表者らが重合したポリ乳酸PLLAを用い、せん断流動下で偏光顕微鏡により観察した。試料を平衡融点以上の温度で融解した後、せん断速度40s-1、せん断時間3sの流動を印加し、結晶化温度Tcで等温結晶化させた。繰り返し融解結晶化では1回目の流動結晶化条件を引き継ぐものとした。 [結果]生成するシシの数は、結晶化時間の増加とともに増加し、その単位体積あたりの生成密度はある一定値vshに収束する。結晶化温度に関わらず流動結晶化の回数の増加とともにvshが減少していくことがわかった。これは、シシが生成する際の配向融液密度の減少を示している。以上まとめると、繰り返し流動結晶化を行うことによって、エステル交換反応による分子鎖の絡み合い解消が起き、PLLAのシシケバブ構造形成に大きな影響を及ぼすことがわかった。
|