2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポリエステル類のシシ構造形成におけるエステル交換反応を介した絡み合い解消の役割
Project/Area Number |
22750206
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 慎一 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (40397873)
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Keywords | ポリエステル / 結晶化 / 流動 / シシケバブ / エステル交換反応 / 絡み合い |
Research Abstract |
[緒言]高分子の成形加工において最も広く用いられている流動場において結晶化を行うと、繊維状結晶(シシケバブ構造)が生成することは古くから知られている。このシシケバブ構造の中心部(シシ)は、分子鎖が繊維軸方向に伸びきって配列した伸びきり鎖結晶であり、高強度かつ高融点(高耐熱性)という優れた性質を持っており、超高強度繊維やナノファイバーコンポジットなどへの応用が展開されている。本研究の目的は、シシ構造の生成には必要不可欠であるが、成長には阻害要因となる高分子鎖の「絡み合い」が、ポリエステル類特有のエステル交換反応を介して解消されるときに、シシ構造形成にどのような影響を及ぼすのか、その分子論的実体解明を行うことである。本年度はその目的達成に向けて、主鎖上のエステル基密度を変えた試料を用い、エステル基密度の変化(エステル交換反応を介した絡み合い解消度の変化)がシシ構造生成に及ぼす影響を明らかにすることとした。 [実験]試料として、主鎖上のエステル基密度が前年度用いたポリ乳酸(PLLA)よりも小さい、poly(12-hydroxydodecanoic acid)(P(12-HDA))およびpoly(16-hydroxyhexadecanoic acid)(P(16-HHA))を重合して用いた。これらの試料についてせん断流動下で偏光顕微鏡により観察した。試料を平衡融点以上の温度で融解した後、パルス状のせん断流動を印加し、結晶化温度T_cで等温結晶化させた。 [結果]P(12-HDA)、P(16-HHA)ともに生成するシシの数は、結晶化時間の増加とともに直線的に増加することがわかった。この直線の傾きからシシ生成速度Iを見積もった。その結果、P(12-HDA)のIはP(16-HHA)のそれに比べて小さいことがわかった。これは、P(12-HDA)の方がP(16-HHA)に比べ、シシが生成する際の配向融液密度の減少が大きいことを示している。以上から、エステル交換反応による分子鎖の絡み合い解消が脂肪族ポリエステル類のシシケバブ構造形成に大きな影響を及ぼすことがわかった。
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