2011 Fiscal Year Annual Research Report
放射線グラフト電解質膜におけるイオンチャンネル構造とプロトン伝導機構の解明
Project/Area Number |
22750208
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
澤田 真一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (70414571)
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Keywords | 燃料電池 / 高分子電解質膜 / 放射線グラフト / プロトン伝導 / イオンチャンネル |
Research Abstract |
放射線グラフト電解質膜のプロトン伝導性の向上を図るには、さまざまな種類の電解質膜の伝導特性と膜構造の相関を検討することが重要である。そこで本年度は、全フッ素高分子である架橋ポリテトラフルオロエチレン(cPTFE)と芳香族炭化水素高分子であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を基材とするグラフト型電解質膜のプロトン伝導特性を比較した。イオン交換容量(IEC)0.5~2.9meq/gの電解質膜のプロトン伝導度σをACインピーダンス法により測定した。IEC<1.0 meq/gではPEEK電解質膜の方がσは高く、一方IEC>2.0 meq/gではcPTFE電解質膜の方がσは高かった。この結果を詳細に検討するため、ネルンストーアインシュタインの式を用いて、プロトンの自己拡散係数Dp、親水性イオンチャンネルの体積分率φ、イオンチャンネルにおけるプロトン濃度Cp、というσの3つの支配因子を算出した。このうちDpはσと同様に、低IECではPEEK電解質膜の方が大きく、逆に高IECではcPTFE電解質膜の方が大きくなった。したがって、σの挙動はDpに著しく依存すると言える。低IECのときでは、親水性グラフト鎖からなるイオンチャンネルのネットワークはPTFEの巨大な結晶構造に阻害され、チャンネルの連結性が悪くなることがDpを減少させたと考えられる。高IECのときでは、cPTFE電解質膜はPEEK電解質膜よりも含水率が高く、プロトンとスルホン酸基の静電相互作用が弱まるのでDpは上昇したと解釈できる。このように、グラフト重合の基材高分子の種類によって、電解質膜のプロトン伝導性が異なることを明らかにできた。
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Research Products
(2 results)