2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNAネットワークを利用したナノスケールトンネル伝導デバイス
Project/Area Number |
22760007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 義明 大阪大学, 産業科学研究所, 特任研究員 (10434896)
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Keywords | タンパク質 / DNA / ネットワークデバイス / 傾斜蒸着法 / ホッピング伝導 / トンネル伝導 / 閾値を持つ電流-電圧特性 / クーロンブロッケードモデル |
Research Abstract |
我々は、シトクロムc(Cyt c)を用いて、ネットワーク構造を有するデバイスの創製を目指して研究を進めている。Cyt cは孤立した酸化・還元中心を持つ金属タンパク質であり、Fe原子の酸化・還元に基づく電気伝導が期待できる。そして、これらの巨大分子でネットワーク構造を作るためにDNAをデバイスの足場として利用する。今回、DNAをテンプレートに用いて、Cyt dDNA構造体の形成、ナノギャップ電極を用いた電流-電圧(I-V)測定、電気伝導機構を詳細に検討した。 Cyt c水溶液をDNA溶液と混合し、SiO_2上に滴下後、乾燥窒素で余分な溶液を除去してCyt cのネットワーク構造を作製した。Cyt dDNA構造体では、高さが15nm程度になるバンドル状や膜状の構造が形成された。さらに、この構造体に傾斜蒸着法を用いて、電極間が数十nmの金電極を取り付け、電気特性の温度依存性を調べた。 まず、高温領域(>100K)では、オーミック性を有するI-V特性が観測された。尚、電気伝導機構は、ホッピング伝導が主となることが分かった。一方、低温領域(<100K)では、両構造体において、オーミック性から逸脱した、閾値を有するI-V特性が観測された。活性化エネルギーを見積もったところ、ほぼゼロであり、トンネル伝導機構であることが示唆された。閾値を持つI-V特性結果は、N次元クーロンブロッケードモデルで説明可能であることが分かった。したがって、一つ一つのCyt c分子が、クーロンブロッケード素子として働いていることが示唆される。このモデルでは、電流値Iは、I=(V/V_<th>-1)^ζとして、電圧値V、全体の閾値電圧V_<th>、電気伝導経路数を表現する指数ζで表示される。ζ値を見積もったところ、バンドル状のCyt dDNA構造体ではζ=3.7、そして膜状のCyt dDNAではζ=2.2であった。これらの変化は、AFMで観察された巨大分子ネットワーク構造の相違に起因すると考えられる。
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