2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760008
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 仙君 島根大学, 総合理工学部, 助教 (20397855)
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 光電子分光 / 有機半導体 / フタロシアニン / フラーレン / 有機/金属界面 |
Research Abstract |
本研究では、光照射下での有機半導体の電子構造の変化を、光電子分光法を用いて直接観測することを目的のひとつとしている。これにより、光生成電荷が有機薄膜に及ぼす影響を電子構造の観点から考察し、有機薄膜太陽電池などの有機エレクトロニクスデバイスの制御に貢献することができる。 本年度は、有機薄膜太陽電池の光電変換層として用いられる亜鉛フタロシアニン(ZnPc)とフラーレン(C60)との界面の電子構造が、光照射によってどのような影響を受けるのかを、疑似太陽光による光励起下での光電子分光測定から考察した。 有機薄膜太陽電池の透明電極として用いられるITO上にZnPcおよびC60を順に積層していき、有機層の膜厚に対する光電子スペクトルの変化を測定した。ITO/ZnPc界面においては、ZnPc側が正に帯電するような界面双極子の存在を示唆する真空準位のシフトが観測された。しかし、ZnPcの膜厚に対するHOMOのシフトはほとんど見られず、ZnPc層内には大きな内部電場は発生していないと推測された。これに対して、ZnPc/C60界面では、ZnPcとC60の間で電荷移動が生じている可能性を示唆するHOMOのシフトが観測された。また、ZnPc層のみの場合、光照射による光電子スペクトルへの影響は観測されなかったのに対して、ZnPc上にC60を堆積させた場合、光照射下において光電子スペクトルが高運動エネルギー側にシフトする様子が観測された。これは、C60層が負に帯電していることに対応すると考えられ、光照射によって生成された励起子がZnPc/C60界面で電子と正孔に解離し、C60層へ電子が移動したためだと考えられた。この光照射による光電子スペクトルのシフト量はC60の膜厚や照射光強度に依存することも確認できた。来年度はさらに詳細な測定結果を得ることで、ZnPc/C60界面での電荷生成に伴う界面電子構造変化への理解が深まると期待される。
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