2011 Fiscal Year Annual Research Report
半導体物性物理に基づいた周波数バンド可変テラヘルツ電磁波発生素子構造設計原理構築
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22760010
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
竹内 日出雄 滋賀県立大学, 工学部・電子システム工学科, 准教授 (50512779)
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Keywords | テラヘルツ電磁波 / 超高速現象 / プラズモン / コヒーレント縦光学フォノン |
Research Abstract |
平成22年度に,undoped GaAs/n-type GaAsエピタキシャル構造においてundoped GaAs層厚を変化させることによって,-これはundoped層の内部電場を制御することにつながる-,テラヘルツ電磁波の周波数を可変化するという実績を上げた。これを受けて平成23年度は,ある任意のundoped GaAs/n-type GaAsエピタキシャル構造において,フェムト秒パルスレーザー光強度を変化させることにより,テラヘルツ電磁波の周波数バンド化変可ができるかどうかという研究を行った。すなわち生成されるキャリアの密度を変化させることによる周波数可変性を検証した。その結果として,i-GaAs層における縦光学フォノンとプラズモンとの結合を介したテラヘルツ電磁波発生という成果を得ることができた。応用的観点に立てば,電極構造を作りこむという複雑な手続きを経ることなく簡便に周波数可変テラヘルツ素子を設計できるという新規な物性物理に基づいた原理を提供できたという点に意義がある。これは,当初とは予想外の良好な結果である。しかもテラヘルツ電磁波素子の設計原理をなす物性物理分野に対して,多大な影響を与えるものであった。フェムト秒パルス光励起下でもコヒーレント縦光学フォノンとプラズモンとが結合し,結合後,半導体内部電場によってそれらが乖離するという現象を得られたからである。これは,従来の分光技術では観測することができなかった半導体中でのコヒーレント縦光学フォノンとプラズモンとのダイナミクスを明らかにしたという点で意義がある。以上の結果から,物性物理学に基づいた周波数可変テラヘルツ電磁波素子設計原理構築という研究テーマに関しては,ほぼ成果が得られたと考えられる。なお本研究を遂行していくなかで,コヒーレント縦光学フォノンからの高強度テラヘルツ電磁波の観測にも成功している。このことは,単色光テラヘルツ電磁波発生素子の開発につながる。このような素子は,これまでテラヘルツ研究分野における一つの課題であった。従って,こうした方面でも成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は,テラヘルツ電磁波の周波数制御には,試料上に電極をもうけるという加工技術が必要であるという仮定の下で,計画が立てられた。しかしながら高度な電極加工技術を必要としないテラヘルツ電磁波周波数可変技術を得ることができた。かつこれまでは微弱とされてきたコヒーレント縦光学フォノンからの高強度テラヘルツ電磁波発生にも成功した。以上の成果から.本研究は.当初の計画以上に進展していると結論される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度では,コヒーレント縦光学フォノンとプラズモンとの結合に起因するテラヘルツ電磁波の周波数可変性を提案することができた。しかしながら超高速分光におけるプラズモンの振る舞いに関しては未解明な点があり,これを明らかにすることで,物性物理学に基づいたテラヘルツ電磁波発生素子の構築原理に更なる自由度を与えることができると考えられる。こうした点に関して研究を進めていく。さらに昨年度では,コヒーレント縦光学フォノンからのテラヘルツ電磁波発生にも成功している。この成功をさらに発展させ,超高速現象下でのコヒーレントフォノンのダイナミクスを明らかにし,テラヘルツ光源素子の研究を進めていく。
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Research Products
(14 results)