2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760015
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
林 将光 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 主任研究員 (70517854)
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Keywords | スピントロニクス / 磁壁移動 / スピントルク / スピン流 |
Research Abstract |
今後の電子産業の更なる発展には、大容量で高性能メモリーの開発が必要不可欠であり、磁壁移動メモリーは用途に合わせて容量・性能を自由に設計できる次世代メモリーとして期待されている。本研究では磁壁移動メモリーの課題である、磁壁を移動させるのに必要な駆動電流密度の低減を目指して、新たな磁壁移動機構の開発を行う。これまで明らかにされていない、ナノスケール細線中の磁壁の運動とスピン流の関係に着目する。スピン流の生成には、細線に温度勾配を印加する手法やスピン波励起を利用する。温度勾配の大きさと向きやスピン波の伝搬モードが駆動電流密度に及ぼす影響を調べ、生成されたスピン流との関係を明らかにする。 平成22年度、23年度の研究成果として、NiFe合金を用いて細線を作製し、マイクロ波帯域の局所磁場を使ってスピン波の励起とその伝搬モードを観察した。特に、時間分解電気測定により、スピン波表面モードの分散関係を導出した。これらのスピン波を用いて、磁壁の移動速度への影響を見積もった。これまでのところ、スピン波生成による磁場駆動の磁壁移動速度への影響は小さく、大きな効果は見られなかった。その要因として、伝搬スピン波の振幅が足りないことや、表面モードの効率が悪いことが考えられる。スピン波の振幅を上げるべく、マイクロ波帯域の局所磁場の振幅を大きくしたところ、磁壁の核形成が観測された。これはマイクロ波磁場によるマイクロ波アシスト磁化反転と同様の原理で説明できるが、細線への効率的な磁壁の注入方法として利用できることが期待される。
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