2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760016
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渋谷 圭介 独立行政法人理化学研究所, 交差相関超構造研究チーム, 特別研究員 (00564949)
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Keywords | 二酸化バナジウム / Mott絶縁体 / ヘテロ接合 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
電荷・軌道・スピンが織りなす複雑な相互作用によって多彩な特性を示す強相関電子系物質の応用に向けて、ヘテロ界面での電子状態の理解が重要となってきている。本研究では、二酸化バナジウム(VO_2)を用いた強相関ヘテロ接合の電子状態の理解と、それを利用した電子デバイスの構築を目的としている。VO_2は室温以上で巨大な抵抗率の変化を伴った金属-絶縁体相転移を示す物質であり、基礎物性の面からも応用の観点からも非常に有用な材料である。 1.W:VO_2の電子状態と結晶構造の解析:Wを添加したVO_2(W:VO_2)の電子状態を光電子分光法により明らかにした。Wの添加量を増やすに従い電子相関の寄与が大きくなることを見出した。また、放射光を利用したX線回折を用いてW:VO_2の相転移前後の結晶構造を調べた。 2.W:VO_2におけるX線誘起絶縁体-金属相転移の発見:W:VO_2に低温でX線を照射することで絶縁体から金属へ相転移することを発見した。これは光誘起相転移の一種であり、光-電子デバイスへの応用の可能性を秘めていると言える。 3.TiO_2/VO_2超格子薄膜の作製:界面におけるVO_2の電子状態を探索するため、TiO_2/VO_2超格子薄膜を作製した。TiO_2との接合界面においてもVO_2は金属-絶縁体相転移を示した。他の酸化物では物質固有の性質が界面で失われることが多いが、VO_2はその例外であることが明らかとなった。 上記の結果はヘテロ界面を理解する上で非常に重要な事項である。特に、VO_2が界面においてもその性質を保つことは強相関デバイスの構築に向けての朗報である。これまでに得られた知見を生かして、平成23年度はショットキー接合・p-n接合の作製に取り組む。また、X線による絶縁体-金属相転移の発現に成功しているので、可視光さらには電界効果による変調を試みる。
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Research Products
(9 results)