2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760016
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渋谷 圭介 独立行政法人理化学研究所, 交差相関超構造研究チーム, 特別研究員 (00564949)
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Keywords | 二酸化バナジウム / Mott絶縁体 / ヘテロ接合 / 相転移 |
Research Abstract |
電荷・軌道・スピンが織りなす多彩な特性を示す強相関電子系物質の応用に向けて、ヘテロ界面での電子状態の理解が必要不可欠である。本研究では、代表的な電子相関物質である二酸化バナジウム(VO_2)を用いた強相関ヘテロ接合を作成し、その電子状態の理解と、それを利用した電子デバイスの構築を目的とした。VO_2は室温以上で巨大な抵抗率の変化を伴った金属-絶縁体相転移を示す物質であり、基礎物性の面からもスイッチデバイス等の応用の観点からも非常に有用な材料である。本年度は主に下記の3点について研究を行った。 1.VO_2/Nb:TiO_2ヘテロ接合:導電性基板Nb:TiO_2上にW(Cr):VO_2薄膜を堆積させ、ショットキー接合を作製した。電気容量測定によってBuilt-in-potential(V_<BI>)を評価し、そのW(Cr)濃度依存性を精査した。W(Cr)濃度を上げることでV_<BI>を減少(増加)する様子を観察した。W(Cr)添加によってヘテロ接合の障壁高さを制御できることを実証した。 2.電界誘起相転移:電界効果トランジスタ構造を作製し、電場によってVO_2の電子状態の制御を行った。巨大な電気容量が得られるイオン液体を用いることで1V以下のゲート電圧においてVO_2の金属-絶縁体相転移が消滅し、全温度領域で金属的な挙動が観察された。さらに、その電界誘起相転移が界面だけでなく、薄膜全体に渡り起っていることを明らかとした。 3.圧力誘起相転移:W:VO_2薄膜において、圧力誘起の絶縁体-金属相転移を観察した。X線回折によって、この変化が構造相転移を伴うものであることを解明した。 ヘテロ界面の障壁高さを化学置換によって制御できるということはデバイス構築へ向けて朗報である。また、VO_2の電子状態を光・電界・圧力によって制御できることを実証した。上記の結果はVO_2の光・電子スイッチング素子への応用を考える上で非常に有用な事項である。また、本研究で得られた知見は、強相関電子相を利用した新規デバイス構築へ向けても大いに有益であると考える。
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Research Products
(15 results)