2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ細線中アンドレーエフ束縛状態の量子コヒーレント操作
Project/Area Number |
22760018
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西尾 隆宏 独立行政法人理化学研究所, 石橋極微デバイス工学研究室, 基礎科学特別研究員 (30565271)
|
Keywords | InAsナノワイヤ / 超伝導 / アンドレーエフ反射 / ジョセフソン接合 / 量子コンピューティング / 超伝導トランジスタ |
Research Abstract |
ナノ細線中のアンドレーエフ束縛状態を利用した量子コンピューティングを実現するため、本年度は量子ビット作製に必須となる低抵抗のナノ細線超伝導トランジスタ作製法を確立した。電極との電気的接触は超伝導量子デバイスの特性を決める重要な要素であることから、ナノ細線材料としては電極とオーミックな接触が報告されている高移動度のInAsナノワイヤを用いた。しかしながら、InAsナノワイヤ表面には自然酸化膜が存在するため、安定的にデバイスを作製することがこれまで非常に困難であった。そこで、本研究では独自のアイデアとして酸化膜層のエッチングにアルゴンスパッタを採用し、酸化膜除去から電極作製まで超高真空一貫で行うシステムとプロセスの開発を行った。これにより、低抵抗、高移動度のデバイスを歩留まり良く作製することが可能となった。室温でデバイス動作確認の後、希釈冷凍機を用いて低温での特性を評価した。その結果、量子化抵抗以下のデバイスでは、InAsナノワイヤ中を流れる超伝導電流と多重アンドレーエフ反射を観測し、マイクロ波を照射することで、ジョセフソン接合系で観測されるシャピロステップ、多重アンドレーエフ反射の生じる系で報告されている分数段のシャピロステップをそれぞれ観測した。さらに、異なる長さを有するデバイスを測定することでナノワイヤの超伝導コヒーレンス長を求め、量子ビットを構成するための最適なデバイス長を見積もった。
|