2010 Fiscal Year Annual Research Report
表面近藤格子系における磁性分子の磁気相およびスピン状態制御
Project/Area Number |
22760026
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚原 規志 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (80535378)
|
Keywords | 表面・界面物性 / 磁性 / 走査トンネル顕微鏡 / 近藤格子 |
Research Abstract |
平成22年度では、基板表面への磁性分子吸着と、それらの自己組織化による周期的な二次元格子の形成によって、近藤格子を表面に形成することと、その磁気的性質を走査トンネル顕微鏡(STM)によって調べることにある。そのようなモデル系として、Au(111)表面に吸着させた鉄フタロシアニン(FePc)分子を選んだ。 STMによる単一分子操作によって、任意の形の格子を形成する技術は現在確立できてはいないが、吸着量を制御することにより、様々な大きさ・形の正方格子クラスターが得られる。これは、表面上の様々な形のクラスターを探し、選んで測定できるというSTMの大きな特徴によるものである。 単一分子では単純な近藤共鳴に由来するスペクトルが観測されるが、格子を形成し、その格子クラスターが大きくなるに従って、スペクトルが2つに分裂する様子が観測された。そして、クラスターサイズが大きくなることでその分裂が大きくなることも分かった。これはクラスターサイズ成長に伴って、近藤格子の形成が進行していることに対応する。 このFePc二次元格子がどのような磁気的性質を持っているか、具体的にはこの系が磁気的秩序か重い電子系かどちらかということが最も興味あるところであるが、これはE_F付近での状態密度マッピングを測定すれば良い。その結果、近藤クラウドがFePc分子の中心に局在しており、さらにスペクトルの分裂ということを考えると、反強磁性秩序を示していることが明らかになった。 この結果は、米国APS社のPhysical Review Lettersに投稿済みである。(平成23年4月にアクセプト)
|