2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22760027
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
遠藤 理 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 助教 (30343156)
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Keywords | 有機薄膜 / 軟X線吸収分光 / π電子系 / 自己組織化 |
Research Abstract |
本年度は研究の目的および実施計画に挙げた、二次元π共役系であるグラフェンおよびグラフェン上の直鎖アルカン単分子層の作成を行い、これらの系の深さ分解炭素K吸収端近傍X線吸収微細構造スペクトル(C K-NEXAFS)測定を行った。グラフェンは超高真空中で加熱したPt(111)清浄表面にn-ドデカンを曝露することで作成した。得られたグラフェンのC K-NEXAFSスペクトルにおいて、入射X線の電場ベクトルが表面垂直を主に向く斜入射でπ*CC遷移が顕著であり、表面平行方向を向く直入射でσ*CC遷移が顕著であることから、グラフェンシートが表面平行に形成されていることが明らかとなった。また走査トンネル顕微鏡観察から、グラフェンシートが一部に欠陥を含むものの、有機物を吸着するために十分な広さの平滑領域を有することが明らかとなった。グラフェン上の直鎖アルカンのNEXAFS測定において、X線吸収に比例して放出されるオージェ電子を放出角ごとに計数し、各励起エネルギーに対して得られた脱出曲線をグラフェン層とアルカン層を表す二種類の曲線でフィットして、スペクトルを分離した。これにより、高配向熱分解グラファイト(HOPG)上のアルカンのスペクトルにおいて分子配向の決定に用いた直入射のσ*CH遷移に加え、斜入射のσ*CH遷移およびσ*CC遷移を含めて分子配向を議論することが可能となった。内殻エネルギーが同一の同種元素のNEXAFSスペクトルを分離する本方法は特異な手法である。別個に金表面におけるチオール分子の自己組織化膜の深さ分解測定を行った結果、π*CC励起の際に放出されるオージェ電子の脱出曲線が、脱出深さに加えて共鳴オージェ過程によるエネルギー依存を考慮する必要があることが示唆される結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は固体表面における、"高さ"を制御したπ共役系の作成ならびに、高さ毎に分割したX線吸収分光測定法(NEXAFS)の確立である。本年度までに、白金(111)面における二次元π共役系であるグラフェン作成法を確立し、深さNEXAFS分解測定によってグラフェン上におけるアルカン単分子層のスペクトルを分離する方法を発展させることができた。一方、一次元π共役系であるポリジアセチレン作成は進行していないが、24年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、白金あるいは金表面に単層レベルのナノグラフェンを形成し、グラフェン上、あるいは周囲に有機化合物を蒸着し、グラフェンと有機化合物の相互作用および分子配向を深さ分解NEXAFSスペクトルから明らかにしていく。特にベンゼン環を含む芳香族系分子とグラフェンとのππ相互作用、一次元π共役系であるポリジアセチレンとグラフェンとの相互作用に着目する。アルカンチオール系の単分子膜を利用した脱出曲線の測定においては、ベンゼン環のπ*軌道への遷移に伴い放出される共鳴オージェ電子の場合、深さに加えてエネルギー依存があることが示唆される結果が得られているため、電子の平均自由行程は文献値と比較し、スペクトルの分解は脱出曲線の実験値を利用した半経験的な方法により行うこととする。
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Research Products
(2 results)