Research Abstract |
本研究では高次高調波EUV光を用いたコヒーレント回折イメージングでのEUVマスクパタン観察を目指している.高次高調波からの出力を,マグネトロンスパッタ法により製作したMo/Si多層膜反射鏡にて反射し,測定チャンバにリレーした.基板は前年度選定した低散乱基板を用いており,パタンなしで観察した回折像より,スペックルのないコントラストの高いフランホーファー回折パタンが得られた.88nmライン/スペース(L/S)パタンを観察し,±1次の回折光を記録した.回折角度は13.5nmに対応し,高次高調波出力より59次の13.5nmのEUV光のみを取り出せた.さらに多層膜5枚で分光したスペクトル幅を回折画像から見積もったところ,λ/Δλ~54程度であった.顕微鏡の分解能を改善するには,開発を進めている多層膜による分光が有用である. パタン観察法を確立するための放射光を用いた原理検証実験において,回折画像からの像再生方法にタイコグラフィー法を採用し,非周期パタンの像再生に成功した.これまではHIOアルゴリズムを像再生に適用していたが,微小パタンを対象としたアルゴリズムであるため,EUVマスクパタンのようなパタン領域の大きな像の再生は難しかった.具体的には現システムの照射領域φ5umに対して,EUVマスク上のパタンサイズは100um以上と大きい.タイコグラフィー法での観察は,照射光の複素振幅分布を参照パタンにて導出後に,被検パタンに対して位置をずらしながら照射する.位置をずらした回折光に対して,それぞれフーリエ変換と逆フーリエ変換を適用し,照明光が重なっていることを拘束条件に像再生する.L/Sパタンの端部分や,十字パタン,L/Sパタン中の欠陥形状からの回折光を像再生し,パタン像を得ることができた.像再生では周波数空間の位相を回復するため,実空間の強度情報と併せて位相情報も得られる.よって,位相分布を直接観察可能である.実際に,基板のバンプ形状を観察し,得られた位相差より高さ5.7nmであることを像として確認できた.
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