2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化2次元ナノ平面ピンニングセンタによる高温超伝導体の粒内臨界電流密度増大
Project/Area Number |
22760031
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
田中 博美 独立行政法人国立高等専門学校機構 米子工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (60511491)
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Keywords | 電子・電気材料 / 解析・評価 |
Research Abstract |
本研究はBi系高温超伝導材料の粒内臨界電流密度(粒内J_c)を改善し、実用化を一層促進することを目的とする。そのために "自己組織化2Dナノ平面ピンニングセンター" を導入しJ_c増大を試みる。また、J_c増大のメカニズムを明らかにし、更なる高J_c化を目指す。その為に、種々の分析手法を駆使して結晶構造・化学結合状態の観点から詳細に調べる。 本年度はBi系高温超伝導材料の粒内J_c改善のため、Ca不純物の粒径を10μm~500nmと種々に変えながらBi系高温超伝導ウィスカーの育成を行った。その結果、得られたBi系高温超伝導ウィスカーのJ_cとCa不純物粒径に強い相関はみられなかった。従って、Ca不純物そのもの自体はピンニングセンターとしては機能している訳ではなく、構造歪を誘起するトリガー的な役割をしていることが示唆された。 また、得られたBi系高温超伝導ウィスカーにおける化学結合状態の変化を詳細に調べるため、硬X線励起光電子分光測定を行った。その結果、過剰に添加したCa^<2+>イオンは全てSrサイトに置換されていることが明らかとなった。これは、Ca-2pの光電子スペクトルにおいて高束縛エネルギー側に観測された第2ピークの存在から突き止めた。Ca^<2+>イオンのイオン半径はSr^<2+>イオンに比べて10%以上小さい。そのため、上記の置換によってBi系高温超伝導ウィスカー中に局所的な構造歪が誘起され、高J_cにつながっていると考えられる。 加えて、当初の計画では予定していなかったが "Bi系高温超伝導ウィスカーの新しい作製法の考案" にも成功した。具体的には "熱応力" のみで作製する方法(TMPC法)である。このTMPC法は従来の触媒法とは成長機構が全く異なる。このTMPC法と従来法とを組み合わせることで、高J_c-Bi系高温超伝導ウィスカーの大型化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究でBi系高温超伝導ウィスカーにCa不純物を過剰に添加することで、高J_c化が実現できることを明らかにした。特に、Ca不純物の添加量が25%の時、J_c値が2×10^5A/cm2と大きな値を示した。また、この高Jc化メカニズムに関する情報が、硬X線励起光電子分光測定により得られている。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
J_c増大のメカニズムに関する知見を結晶構造の観点から詳細に調べる。そのために、得られた高J_c-Bi系高温超伝導ウィスカーにおいてX線回折測定および超高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察などを行う。 また、Ca添加量が25%以上になるとBi系高温超伝導ウィスカーのサイズが著しく減少した。 そこで、高いCa添加量を維持しつつ大型化するための、新たな工夫を行う。具体的にはBi系高温超伝導ウィスカーの成長駆動力を増大させる新手法であるTMPC法を利用する。この手法を用いると "熱応力" を成長の駆動力として利用できる。これにより、高J_c-Bi系高温超伝導ウィスカーの大型化を試みる。
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[Remarks] 【受賞】
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[Remarks] 1.平成23年ICMAT2011 the Best Poster Award
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[Remarks] 2.平成23年第17回日本高専学会年会講演会優秀ポスター賞
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[Remarks] 3.平成24年第21回日本MRS学術シンポジウム奨励賞