2010 Fiscal Year Annual Research Report
偏極希ガスイオンビームの発生と、表面・界面磁性分析への応用
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22760032
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鈴木 拓 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主幹研究員 (60354354)
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Keywords | 表面スピン / スピン偏極イオンビーム / イオン散乱分光法 |
Research Abstract |
表面・界面の磁性は、低次元系の電子相関を解明する上で重要な学術課題であり、またスピン素子開発等の応用分野でも重要である。本研究者はこれまでに「スピン偏極イオン散乱分光法(SP-ISS)」を開発し、これによって表面・界面の元素選別磁性分析が可能となることを実証した。本研究では、この手法による表面磁性分析の妥当性の検証や、標的磁性元素の質量に近い希ガスイオンの偏極ビームを世界で初めて発生させるための技術開発を行う。 本年度では、SP-ISS測定の妥当性検証を目的として、i)イオンビーム照射による表面磁性変化と、ii)非断熱スピン遷移に関して調べた。まずi)に関しては、Fe(100)でのSP-ISSによる磁気ヒステリシスと、イオンビーム照射(2keVAr+イオン)との関係を調べた。イオンビーム照射により、(1)最表面の保持力が増大する、(2)磁気ヒステリシスの正方性が低下する、(3)最表面のスピン分極はほとんど変化しない、等の事柄が明らかになった。イオビーム照射によるこの磁性の変化は、表面に導入された欠陥などがピニングセンターとして働き、磁壁移動が妨げられた結果であることが明らかになった。またii)に関しては、イオンが非断熱スピン遷移を複数回経験すると、断熱遷移と非断熱遷移間で量子干渉が起こり、これがビーム偏極率の磁気振動として観測されると考えられる。しかしイオンビームに関しては、この量子干渉の報告がなかった。本研究では、平行と反平行にスピン偏極したHe+イオンの鉄からの散乱イオン強度を測定し、それを基に、スピン非対称性の磁場依存性を求めた。このスピン非対称性では、明瞭な磁気振動が観測され、イオンビームで初めて前記の量子干渉が観測され、SP-ISSは最表面磁性解析のみならず、非断熱遷移に関する原子物理においても新たな展開をもたらす計測手段であることが示された。
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Research Products
(11 results)