2011 Fiscal Year Annual Research Report
偏極希ガスイオンビームの発生と、表面・界面磁性分析への応用
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22760032
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鈴木 拓 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主幹研究員 (60354354)
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Keywords | 表面スピン / スピン偏極イオンビーム / イオン散乱分光法 |
Research Abstract |
表面・界面の磁性は、低次元系の電子相関を解明する上で重要な学術課題であり、またスピン素子開発等の応用分野でも重要である。本研究者はこれまでに「スピン偏極イオン散乱分光法(SP-ISS)」を開発し、これによって表面・界面の元素選別磁性分析が可能となることを実証した。本研究では、この手法による表面磁性分析の妥当性の検証や、標的磁性元素の質量に近い希ガスイオンの偏極ビームを世界で初めて発生させるための技術開発を行う。具体的には、本研究者自身によって見出された散乱におけるスピン軌道相互作用を利用する希ガスイオンのスピン偏極について、散乱断面積のスピン依存性等の基礎的検討を行う。 本年度では、SP-ISS測定の妥当性を検証するために、磁気ヒステリシス測定を行った。そこで試料周りに磁場掃引用のコイルを新たに設置し、これによって定義磁場と垂直方向に磁場を発生させることで、イオンのスピンの向きを断熱的に変化させながら磁気ヒステリシス測定を行った。この測定では、スピン非対称性が磁場掃引に対して変化する様子が観測されたが、その挙動は、磁場中のイオンスピンの向きと、磁化反転で説明された。したがってこの測定から、SP-ISSのスピン非対称性が、最表面スピンを反映していることが示された。 また前年度までに明らかになった衝突過程におけるスピン軌道相互作用の解明に向けた実験を行った。具体的には、金の様な非磁性表面でのSP-ISSスピン非対称性の入射角度、出射角度、散乱角度、の各角度に対する依存性を調べた。これらの実験によって、スピン軌道相互作用によるイオンの電子スピン偏極を評価した。この基礎的検討から、非磁性の基板にイオンビームを照射すれば、散乱イオンは一般にスピン偏極していることが明らかとなった。このように本研究では、非磁性基板を使った散乱法により、希ガスイオンのスピン偏極に向けた見通しを得た。
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Research Products
(15 results)