2012 Fiscal Year Annual Research Report
錐制約付き半無限計画問題のフィルタ設計およびDSM通信に対する応用
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22760064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 俊介 京都大学, 情報学研究科, 助教 (20444482)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数理工学 / 最適化 / 半無限計画 / 錐計画 / フィルタ設計 / 国際研究者交流(台湾) |
Research Abstract |
平成24年度に挙げた成果の中で最も特筆すべきものが,無限個の錐制約をもつ半無限計画問題(Semi-Infinite Conic Program: SICP)に対して,陽的交換法と正則化法を組み合わせたアルゴリズムを開発したことである.SICPは定式化能力に大変優れており,多くのフィルタ設計問題が二次錐という錐を用いたSICPで表されることが知られている.実際,本研究においても,フィルタ設計問題と大変関連の深い「ベクトルチェビシェフ近似問題」に対して,提案アルゴリズムを適用した実験を行っており,その効能を確認している.また,本研究では,アルゴリズムの提案と応用のみならず,アルゴリズムの収束性に関する理論的な保証を与えた.これらの成果は論文としてまとめて,SIAM Journal on Optimization という最適化の分野でも最高峰のジャーナルに投稿し,採録されるに至った. この成果以外にも,二次錐相補性条件を含む最適化問題に対する逐次二次計画アルゴリズムを開発した成果(Pacific Journal of Optimizationに採録予定)や,ある種のロバスト最適化問題(データに不確実性を含む最適化問題)を半正定値計画問題として定式化できることを示した成果(Computational Optimization and Applicationsに採録済)などを挙げることができた.これら2件についても論文誌に投稿し,採録されるに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゴリズム開発という点においては,かなり順調に進展していると言ってよい.特に,無限個の錐制約をもつ半無限計画問題(SICP)に対しては,前項でも述べたように,理論的な結論も得ることができ,論文としても高い評価を受けた. また,応用面では「ベクトルチェビシェフ近似問題(多くのフィルタ設計問題は本質的にベクトルチェビシェフ近似問題に他ならない)」を二次錐という錐を用いたSICPとして定式化し,それにより提案アルゴリズムの適用を可能とした.また,提案アルゴリズムの十分な計算速度と求解性能を確認することができた. これ以外にも,当初予定になかった「二次錐相補性制約をもつ最適化問題」に対するアルゴリズム開発にも着手でき,こちらも或る程度の結果(アルゴリズム提案と簡単な収束解析)を得ることができた.この研究は,当初の錐制約最適化問題の研究を進めていくうちに自然な興味として付随的に湧いてきたものであったが,通常の錐制約最適化問題に比べてより複雑な構造をもつため,これまであまり研究がなされていなかった.これに対しても,新しい結果をいくつか得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,錐制約をもつ半無限計画問題に対するアルゴリズム開発と理論的解析に関する研究をさらに推し進めて行きたい.本課題をスタートさせた当初の予定よりも理論に重きを置いた研究の流れになっているが,学術研究としてのアルゴリズム開発は,ただ単に速いだけでなく,理論的背景をしっかりと押さえることが重要であるものと考えられる.このように,理論をしっかり押さえた上で応用も考えていきたいと思う.勿論,開発したアルゴリズムを具体的な問題に適用していくことも重要である.たとえば,これまで,錐制約付き半無限計画問題の応用例として,フィルタ設計やDSM通信が考えられてきたが,最近,注目を浴びている遺伝環境ネットワーク(Gene-Environment Network)や,それに関わるロバスト最適化などにも応用ができないか模索して行きたい.また,不確実なデータ構造をもつ交通均衡問題を二次錐を用いた相補性問題として定式化するという研究も近年少しずつ行われ出しており,これまで培った技術をそのような分野に活かしていくことも考えて行きたい.
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Research Products
(8 results)