Research Abstract |
本研究では,ダイヤモンド製圧子の接触負荷によって発生する水素ぜい化き裂を利用した新たな水素ぜい化感受性評価法を開発する.具体的には,水素を吸蔵した高強度鋼に対してダイヤモンド製圧子を押込み,圧痕から生成するき裂の発生および進展機構を解明して,その知見に基づいた水素ぜい化に対するき裂発生強度(σ_<scc>)やき裂進展抵抗(K_<I,HESCC>)を推定する方法を提案する.本年度の前半では,水素吸蔵法の検討と接触負荷による水素ぜい化発生の力学条件に関して検討した.本研究では,高強度鋼の一例としてマルエージ鋼を対象とした.水素吸蔵は簡便な電気化学的手法によって実施するが,溶液,電流密度,チャージ時間の3条件に加え,水素吸蔵後の室温大気中における試験片放置時間も変化させることで,試料中の水素吸蔵量を変化させる条件を検討した.昇温脱離ガス分析法(Thermal Desorption Spectroscopy : TDS)により,諸条件と水素吸蔵量の関係を明らかにした.その後に,試作した負荷試験装置を用いて,水素ぜい化による接触破壊を発生させた.この結果は,吸蔵水素量とき裂発生駆動力に依存することが分かった.別途,有限要素解析を実施し,その駆動力は対象材料(弾塑性特性)と圧子形状に依存することが分かり,また垂直応力(最大主応力)支配で,き裂が発生することが明らかとなった.そして,実験より推定したき裂発生期間と照合することで,き裂発生強度を推定した。すなわち,本手法によって水素ぜい化のき裂発生強度を評価できる指針を示した.さらに,後半では新規負荷装置の開発に着手し,水素ぜい化き裂の発生および進展のメカニズム明らかにする装置開発や計算法の構築を目指している.これより,次年度以降で本研究の最終目標である水素ぜい化感受性評価法を構築できる予定である.
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