2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素誘起の接触破壊力学の構築と水素ぜい化感受性の短時間測定技術
Project/Area Number |
22760077
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米津 明生 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40398566)
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Keywords | 水素ぜい化 / 水素ぜい化感受性評価法 / 接触負荷 |
Research Abstract |
本研究では,ダイヤモンド製圧子の接触負荷によって発生する「水素誘起の局所接触破壊(水素ぜい化の接触破壊)」を利用した,水素ぜい化感受性の評価法を新たに開発することを目的としている.具体的には,水素を吸蔵した高強度鋼に対してダイヤモンド製圧子を押込み,圧痕から生成するき裂の支配力学を解明するとともに,そのき裂長さから水素ぜい化に対するK_<I,HESCC>を推定する方法を提案する.従来は破壊力学試験法に基づいたき裂進展特性から評価されていたが,本手法は試験片の平滑面にダイヤモンド圧子を押込み,発生したき裂長さから超簡便・超短時間でK_<I,HESCC>を測定するという特徴を有している. 本年度は,有限要素法を用いてき裂進展の力学解析を実施した.具体的には,き裂進展経路に組み込んだ結合力モデルにより,圧子接触負荷中に生じるき裂進展を再現できる力学解析の手法を確立した.得られた成果は以下のとおりである. (1)表面ラジアルき裂を対象にするため3次元弾塑性モデルを構築した. (2)結合力モデルを組み込んだ弾塑性接触解析を構築し,その有用性をぜい性材料で検討した.き裂が発生しやすいセラミックス材料を対象にして,き裂進展挙動の解析やじん性値を評価した. (3)本供試材に対して最適な結合則を検討した(実験結果を再現できる最適な結合則を見出した).押込み力や圧子形状を変化させて実現した異なる力学状態においても実験結果を説明できる結合則(Traction-Separation則)を明らかにした. 以上のように,本年度は計算手法の確立を主として,計画調書とおりに研究を遂行できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,局所的な接触負荷で発生する水素ぜい化メカニズムの解明とそれに基づいた水素ぜい化感受性評価であり,有限要素法などによる応力解析は必須である.本年度は,き裂の進展挙動を計算できる結合力モデルを組み込んだ有限要素法を確立した.これにより,本目的の達成のための基盤技術は,ほぼ確立できたと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
評価法の基盤技術は既に確立したため,今後は本手法を適用できる様々な高強度鋼を調査し,より一般的な評価法の確立を目指す.なお,既にマルエージ鋼などの高強度鋼に本手法は適用可能であることを確認しており,その材料に関する検討を優先的に進める.さらには,本手法は表面改質材などのぜい性材料に対しても応用できると考えられる.
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