2011 Fiscal Year Annual Research Report
cross-ply構造を利用した高密着力を有する炭素系硬質薄膜被覆部材の創製
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22760079
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
曙 紘之 広島大学, 大学院・工学研究院, 助教 (50447215)
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Keywords | 炭素系硬質薄膜 / 密着性 |
Research Abstract |
昨年度までの実験的検討により,1層のみ(厚さ1.5μm)のcross-ply構造成膜が可能であることを確かめたため,今年度はこれを複数回積層することが可能であるか,またこれにより,本研究の目的とする従来の成膜に比べ著しく高い密着力を有する炭素系硬質薄膜被覆部材の創製が可能であるかを実験的に検討する目的で以下の通り実施した. 1.昨年度同様,基材(SCM440)を板状試験片に機械加工し,成膜に適した表面粗さまで機械的研磨を行った. 2.次に昨年度成膜可能であることを確かめた厚さ1.5μmのcross-ply構造を3層,および6層積層することにより,3層cross-ply積層,および6層cross-ply積層した2種類の炭素系硬質薄膜被覆試験片を作成した.なお,昨年度同様,比較的軟質なDLC層にはタングステンを添加し,成膜には一般的な炭素系硬質薄膜成膜手法の一つであるUBMS装置を用いた. 3.作成した2種類のcross-ply構造を有する被覆試験片の断面を走査型電子顕微鏡SEMにより詳細に観察することにより,被膜性状を確認した.その結果,3層cross-ply積層被膜には被膜の割れや,基材界面での割れは確認されなかったものの,6層cross-ply積層被膜には,局所的に界面剥離が確認された.これは,被膜厚さの増加に伴い被膜の内部応力が増大したことに起因するものであると考えられる. 4.上述した2種類のcross-ply構造を有する被覆試験片に対し,繰返し負荷を与えることにより,その耐久性,密着性を検討した.その結果,従来の硬質薄膜被覆部材に比べ,その耐久性が向上していることが確認された.来年度以降,その耐久性向上メカニズム,またさらに高い耐久性向上のための被膜構造の検討を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね申請書に記載した研究目的通りに進んでいるが,今年度実験を予定していた被膜ミクロ観察について,一定の観察結果を得られていないため.この点についてはすでに観察手法等の再検討が終わっており,来年度早い段階にて達成できる遅れであり,問題となる遅れとは考えていない.
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した通り,今後は本研究で提案した成膜手法が,一般の成膜手法に比べ優位な要因を実験的に明らかにしていく.また得られた実験的知見を基に,積層方法を再検討し,より高い耐久性・密着性を有する硬質薄膜成膜手法の確立を目指す.
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Research Products
(1 results)