2011 Fiscal Year Annual Research Report
インプランタブル無鉛圧電材料の混晶設計と実践的創製支援シミュレーション
Project/Area Number |
22760087
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
上辻 靖智 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00340604)
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Keywords | 第一原理計算 / 圧電材料 / バイオマテリアル / 複合ペロブスカイト / スパッタ薄膜 / マルチスケール解析 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は下記の3項目に大別される. 1.複合ペロブスカイト化合物のフォノンモード解析と有力候補の探索 単晶に対して前年度に構築した,フォノンモード解析に基づく構造相転移プロセスの予測法を混晶に応用した.すなわち,混晶の対称構造におけるフォノンモードを解析し,負の振動数をもち構造を不安定にするソフトモードを調査した.次に,全エネルギが極小となるソフトモード原子変位を初期値に導入して対称性を規定しない状態で緩和計算を実施し,これに誘起される非対称構造の晶系を特定した.その結果,複数の非対称構造で安定する化合物に着目し,モルフォトロピック相境界で巨大圧電特性を発現する新規化合物の有力候補を特定した. 2.ランダウ現象論に基づくエネルギ関数の検討 単晶を対象として,秩序変数を自発分極としたエネルギ関数を検討した.すなわち,次数の上限を6として,秩序変数の係数を同定するために,ソフトモードに誘起された非対称構造における全エネルギと自発分極を計算してエネルギ関数の基礎データを収集した. 3.スパッタ薄膜創製実験 第一原理計算により見出した新規材料のスパッタ薄膜創製を目指して,RFマグネトロンスパッタによりペロブスカイト型酸化物基板(SrTiO_3)に対して,下部電極層(SrRuO_3)の形成,新規材料(MgSiO3)の成膜を試みた.XRDによる結晶構造分析およびAFMによる強誘電特性評価を実施した.その結果,ドメイン・スイッチングによるヒステリシスおよびバタフライ特性の測定に成功し,スパッタ薄膜創製のための基礎データを収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算による複合ペロブスカイト化合物の探索と,単晶MgSiO_3のスパッタ薄膜創製実験は計画通りに実施できた.なお,エネルギ関数の検討では,秩序変数の係数同定までには至らなかったが,これに必要な全エネルギと自発分極に関する基礎データは得られたことから,おおむね本年度の目標を達成できたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って,平成23年度の単晶に対する研究実績を踏まえて,平成24年度は混晶を重点的に研究する.具体的には,特定した複合ペロブスカイト化合物の有力候補のみに着目して物性を詳細に評価した上で,エネルギ関数の構築,状態図の予測,スパッタ薄膜創製実験を行う予定である.
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