Research Abstract |
弾性係数は,熱応力,残留応力などの強度評価パラメータの算出に必要な物性値であり,遮熱コーティングの設計に不可欠である.昨年度は,遮熱コーティングの1100℃に及ぶ高温焼結中の全方向の弾性係数を評価可能な共鳴超音波計測システムを構築した.本年度は,焼結中の全方向の弾性係数の値とその変化挙動を明らかにすることを主目的とした.その主な研究成果は以下の2つに大別できる. 1.ジルコニア遮熱コーティングの全方向弾性係数の焼結挙動 大気プラズマ溶射遮熱コーティングに対し,面内等方性の弾性異方性を仮定し,常温から1100℃までの全方向の弾性係数を明らかにした.ヤング率の異方性は強く,面外方向のヤング率は面内方向より低いことが分かった.溶射まま皮膜では,試験中の焼結により,約800℃を超えるとヤング率が上昇し始め,約1000℃を超えると急にヤング率が上昇することが分かった.この焼結によるヤング率の上昇率は,面内方向と面外方向でほぼ同じであり,焼結の方向性依存は小さいことが分かった.一方,ポアソン比の異方性は強く,各ポアソン比は温度に依存せずほぼ一定で,焼結による変化は小さいことが分かった.また,せん断弾性係数の異方性は弱く,焼結挙動はヤング率と同様であった. 2.耐酸化コーティングの全方向弾性係数の温度依存 遮熱コーティングのボンドコートとして用いられる耐酸化コーティングCoNiCrAlYに対し,面内等方性の弾性異方性を仮定し,全方向の高温弾性係数を測定した.組織構造の異方性が強いものと弱いものを準備し,800℃以下の高温にてその温度依存を計測した.各ヤング率と各せん断弾性係数は試験温度の上昇で低下したが,各ポアソン比の変化は小さかった.また,各弾性係数の異方性の温度依存は小さいことが分かった.
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