Research Abstract |
優れた工具特性を持ちながら,良好な被加工性を兼ね備えた新しいPCD工具の製造を目的に,導電性ダイヤモンド粒子を原料としたEC-PCDに着目し,本素材の放電および放電複合研削加工特性を調査した.本年度の研究では,まず,EC-PCDを回転電極として利用して,PCDの放電研削を行った.その結果,既存のPCDは,原料ダイヤモンド粒径に被放電研削性が大きく依存し,粒径φ25μmでは,ほとんど加工ができずに電極消耗も著しいが,EC-PCDは,原料ダイヤモンド粒径の影響を殆ど受けずに,安定して加工できることがわかった.また,EC-PCDは,電極素材として利用することも可能であることを示した.次に,V字形状エッジを有するEC-PCD製円盤工具の高精度成形を試みた.電極および被削材ともに回転させて放電成形を行った結果,被削材EC-PCD円盤の外周全面に渡ってチッピング等も発生せずシャープなエッジ部を形成しているとともに,斜面部も凹凸が小さな平滑面を呈することが確認できた.斜面部の平均粒径25μmの原料ダイヤモンド自身も平滑に放電除去し,エッジ先端部のコーナーRは2.5μm以下と極めて鋭角な状態が確保できた.さらに,EC-PCDは,ワイヤーカット放電加工も良く,材料把持が困難な複雑で微細な形状の加工であっても容易に対応できることを示した.さらに,ダイヤモンドホイールによるEC-PCDの放電複合研削では,EC-PCDは既存のPCDに比べて加工性が良く,研削抵抗の低減と安定化,表面性状の向上を達成できることを示した.本研究によって,種々のEC-PCDの放電援用加工特性を明らかにしたことで,本素材を活用した切削・研削工具,金型,電極および精密部品として活用するための指針が得られた.
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