2011 Fiscal Year Annual Research Report
不溶性2種混合流体の熱力学的特性を利用したキャビテーション抑制法の確立
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22760123
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
川島 久宜 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50399531)
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Keywords | キャビテーション / 気泡 / 冷媒 / 熱・物質輸送 / 可視化計測 |
Research Abstract |
キャビテーションにおける崩壊圧力の抑制方法の確立を目指して低沸点冷媒液体注入法の有効性を実験的に調べた. まず単一冷媒液滴から発泡する気泡の膨張・収縮運動を実験的に調べるため実験装置の見直しを行った.これまでの実験から冷媒液滴から発泡した気泡の衝撃力は,水中にある空気から発泡する気泡の衝撃力に比べ大幅に低減されることが分かった.しかし,このメカニズムの詳細を解明するためには,気泡の周囲圧力を更に精密に制御する必要があることが分かった.そこで気泡の周囲圧力に対して,減圧時間,減圧幅,圧力回復時刻,圧力回復幅を制御できるよう装置の改良を検討した.既存の装置では気泡の膨張を促す減圧機構については隔膜を電気的に破膜する方法を使用している.新たに製作する圧力回復装置は操作が簡便な無隔膜機構を採用した.本年度は改良する実験装置の設計,製作,および基礎的な予備実験を実施し,冷媒液滴から発泡する気泡の膨張・収縮運動をとらえる準備を行った. 次にキャビテーション流れに対する冷媒注入効果を調べるため衝撃力計測を実施した.有識者よりキャビテーションの衝撃力は,物体表面に PVDFフィルムを用いて計測することが望ましいと助言を受けた.そこで本実験でも既存の圧力センサから PVDFフィルムを用いた衝撃力センサの製作を実施し,可視化計測結果と比較することでキャビテーション流れに対する衝撃力計測を実施した.自作した衝撃力センサを用いた計測においてもキャビテーション流れに冷媒を注入することにより物体表面での衝撃力は低下することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単一気泡の運動に対する実験は気泡の膨張過程については当初の予定通り実験を実施することができた.しかし,冷媒液滴を用いることによる衝撃力の低減効果を調べるためには,気泡の成長から能動的に崩壊運動を得ることが必要となった.既存の装置では能動的に気泡の崩壊を促す機構が設けておらず装置の改良が必要となった.特に気泡の崩壊を促す圧力回復機構は極力取り扱いを簡単にする方法を検討した.具体的には,減圧機構には薄い隔膜を用いた圧力発生機構を用いているが,圧力回復機構には無隔膜による機構を用いることを第一に考えた.そのため装置の設計,製作,基礎的な動作確認に大幅な時間を要し,気泡の膨張・収縮運動を捉えるには至らなかった. キャビテーションにおける衝撃力計測に対して有識者からの助言により当初の計画には無かった衝撃力センサの製作を本研究計画に取り入れた.そのためキャビテーション流れに対する可視化計測と衝撃力計測の同時計測の実施に遅れが生じた.また,既存の計測装置では衝撃力を計測するための時間分解能が足りず,装置の新規購入に時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
本実験では冷媒液体を用いることによりキャビテーションの衝撃力を抑制することを目的としており,実験には2種類の相変化をともなう液体(冷媒,水)を使用する.この衝撃力抑制効果のメカニズムを理解するためには,気泡の周囲圧力を水と冷媒の飽和蒸気圧に対して僅かに差を与えることにより非平衡状態を生み出す必要がある.そのため,冷媒液滴から発泡する気泡の膨張・収縮運動に対する熱・物質輸送の影響を調べるためには気泡周囲の圧力を能動的に制御する必要がある.本年度製作した気泡周囲の圧力回復装置の基礎特性を把握した後に,気泡の周囲圧力を精密に変化させた実験を実施することで冷媒から発泡する気泡の運動の詳細を捉える. キャビテーション流れに対して自作した衝撃力センサを用いて,冷媒注入効果の定量的評価を行う.実験では高速度カメラを用いた可視化実験と自作した衝撃力センサを用いた同時計測を行い,流れの解析とあわせて冷媒を注入した際のキャビテーション衝撃力の低減効果を調べる.
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