Research Abstract |
小型熱交換器などの冷却材流れにおいて,その低レイノルズ数化や再層流化現象は効率的な熱輸送や熱除去を目指す上で妨げとなる事象である.本研究では,層流・乱流間の遷移レイノルズ数域にある壁乱流に焦点を当て,遷移現象の解明と流動特性の評価を目的としている.特に,規範的な壁乱流である平行平板間流れを解析対象としており,乱れが縞状の空間的間欠性を示す特異な現象(乱流縞)の解明が主なる課題である.本年度は,大規模な計算領域を用いた直接数値シミュレーション(DNS)および可視化実験を実施して,乱流斑点から乱流縞への発展の過程について解析した.また,粒子画像流速測定(PIV)を用いた系統的な測定により,乱流縞の速度分布およびレイノルズ数依存性を調べた.これにより,以下の知見を得た. 1,遷移レイノルズ数域において,局所的にでも強い三次元的乱れ(乱流斑点など)が発生した場合には,乱流縞を伴う流れ場へと発達し平衡状態となる.2,乱流域が縞状になる機構として,スパン方向速度成分を含むレイノルズ応力の非一様性と二次流れが寄与しているものと考えられる.また,乱流縞に関する運動量輸送のメカニズムについても理解が進み,準層流域・乱流域間の乱流エネルギ輸送はほぼ無いことが分かった.3,平面クエット流に安定方向のコリオリ力を加えた際に現れる乱流縞は,乱れの維持に寄与しており,乱流縞を伴わない場合に比べて壁面摩擦が大きい(運動量輸送が活発である)ことが分かった. 以上の成果の通り,遷移域の流れ場に内在する秩序構造について,その特性の理解が進められたことは工学分野のみならず流れの不安定性問題に重要な指針を与えるものである.
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