2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植による肝臓内血流バランス崩壊の数値流体力学解析に関する研究
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22760138
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
山本 高久 岐阜工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10345960)
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Keywords | 血行動態解析 / 肝移植 / 数値流体力学解析 |
Research Abstract |
我が国では肝疾患に対する有効な治療法として生体肝部分肝移植やPTPE(門脈塞栓術)が行われている。これら治療においては,肝臓内の血流バランスが術前後で大きく変化する。このような血流バラスンの崩壊は,術後経過に大きな影響を及ぼすものと考えられている。現在,これら手術・治療の可否の判断はCT,MRI検査をもとにした医師の経験やスキルに依存しており,術前に定量的な予測分析を行う新たな手法が望まれている。そこで本研究では,肝臓内に流出入する血液のおおよそ8割を占める門脈に着目し,同主要血管の3次元形状データをCT,MRI画像データより構築,流動解析を行うこととした。また,得られた解析結果は様々な症例の血行動態と比較を行い,術後門脈の血流バランスの予測手法の確立を目指す事とした。 本研究は3カ年で遂行することとし,研究計画の2年目となる本年度は門脈CT,MRI画像データから抽出困難な門脈の2次分枝以降の末梢血管網の数値モデルを構築した。本モデルでは末梢血管網のフラクタル性に着目し,2次元の仮想血管網を構築している。そして,構築した血管網の一つ一つの血管に対し流動抵抗を管内流動抵抗の式(ダルシー・ワイズバッハの式など)から算出,これを血管網全てについて積算し,末梢血管網の流動抵抗を算出した。実症例のドップラー血流速測定結果との比較を行ったところ,末梢血管網モデルを門脈の流出境界に与えることにより,実際に近い血流バランスを解析上,再現する事ができた。次年度以降は,このモデルを基に術前後の血流バランスの変化を解析し,本研究の目的である手術による血流バランス崩壊を再現可能なモデルの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究3カ年計画のうち2年を終えようとしているが,現在のところ,MRI,CTデータからの門脈の抽出と末梢血管網モデルの構築をほぼ終えている。最終年度はこれまでに作成した血管網モデルを用い,実症例の血流ドップラー計測データとの比較・検証を行い,術後の血流バランス崩壊を数値的に予測可能なモデルおよび解析手法の確立を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析においては血管の伸張は考慮していないが,術前の門脈での血流バランスは数値解析上ほぼ再現できるようになっている。しかし,大きく2分岐する門脈の片方を塞栓するPTPEでは,残りの血管網に通常時よりも多くの血液が流入し,場合によっては血管の伸張が起こる事が予想される。この伸張の度合いは,今後,実際の症例データを精査し評価することとし,その一方で血管の伸張に対応可能な血管網モデルの構築にもとりかかる予定でいる。
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Research Products
(1 results)