Research Abstract |
平成22年度は,高分子(ポリアクリルアミド500ppm)添加流体(粘弾性流体)と蛇行流路を組み合わせることで,低レイノルズ数領域における乱れおよび伝熱促進が達成できるかどうかを検討するために,ミリ蛇行流路を用いた等温加熱条件下での平均熱伝達率測定と圧力損失測定,およびマイクロ流路とPIV計測装置を用いた詳細な速度場測定を行った.その結果,伝熱実験では,粘弾特性をもたないニュートン流体では,平均ヌッセルト数がReに依らずほぼ一定となったのに対して,粘弾性流体では,測定したレイノルズ数の範囲Re=0.5~2.0では,ヌッセルト数はReに対して増加し,最大で8倍程度の伝熱促進効果が得られた.可視化実験から,この現象は流れの非定常化と渦の生成により生じたものであることを確認した.一方,摩擦損失係数では,ニュートン流体に対して10~30倍ほど増加しており,乱れによる圧力損失の増大が観測された.ただし,総合性能を評価した場合,伝熱促進効果が圧力損失増大の影響を上回る場合があることが分かった.マイクロ流路測定では,速度場と乱れ統計量の詳細な検討を行った結果,蛇行流路の上流領域では,ブラウン運動による高周波変動成分とは別に,2~5Hzの低周波成分の変動が存在することが分かった.これらは,主に湾曲流路内の流れの不安定性と二次渦に対する粘弾性流体流れの法線応力成分の影響によって生じると考えられる.一方,蛇行流路の下流領域では,下流に行くほど乱れ強さが減少することが分かった.これは,上流では流れの不安定性の関係から大規模な渦が生成されるのに対して,下流では,主に上流から供給される渦により乱れが生成されているためである.したがって,周期構造をもつ蛇行流路内でも乱れ特性と混合性能が変化することがわかった.平成23年度は,より詳細な乱れの生成メカニズムを解明すると同時に,高い混合・伝熱促進性能を示す流路形状を検討する予定である.
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