2011 Fiscal Year Annual Research Report
海水系におけるクラスレート水和物の結晶成長(新規エネルギー技術の高度化に向けて)
Project/Area Number |
22760157
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大村 亮 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70356666)
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Keywords | 熱工学 / 結晶成長 / メタンハイドレート / クラスレートハイドレート / メタンハイドレート |
Research Abstract |
研究実施計画に記した通り,天然ガスのモデル物質としてメタンあるいはメタン+エタン+プロパン混合ガスを用いた結晶成長観測実験を実施した.3MPa-10MPa程度の圧力の模擬天然ガス雰囲気中に水滴あるいは水プールを保持し天然ガス・水の気・液界面に生成・生長するハイドレートを対象に実験を実施した.海水相当濃度であるモル分率0,035あるいはそれ以上の濃度の塩化ナトリウム水溶液を用い,純粋メタン+海水相当濃度塩化ナトリウム水溶液系での実験を実施して,結晶成長速度と結晶形態を詳細に観測し,純水系での結果との対比から水溶液中の塩が結晶成長に及ぼす影響を明らかにした.また,結晶成長の駆動力の指標としてサブクール度(平衡温度と実験温度の温度差)を用いて,この指標と結晶成長速度,結晶形態の関係を整理して駆動力に依存した結晶成長挙動・結晶形態の多様性の解明とその支配因子に関する考察を行った. ハイドレート結晶は天然ガス・水溶液界面に薄膜状・層状の多結晶体として成長することが明らかとなった.また,この多結晶体の成長過程を詳細に顕微鏡観察することで多結晶体全体の成長速度,個々の結晶の成長速度.個々の結晶の形態(crystal habit, crystal morphology)を明らかすることができた.本年度の結果から海水系では純水系と比べて結晶成長速度は低下するものの,結晶成長の駆動をそろえて比較すると結晶形態には変化が見られないことが実験的に明らかとなった.結晶形態は個々の結晶の成長速度と核生成速度とのバランスで決まる.結晶成長の駆動力が大きな場合には個々の結晶の成長速度は大きくなるが,核生成速度も大きくなるため,小さな結晶が多数形成されることになる.一方,駆動力が小さい場合には結晶成長速度は小さいが核生成速度も小さくなり比較的大きな結晶が少数形成されることになると解釈できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように,研究は実施計画に従って進展しているが,計画以上の進捗はない.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は三年計画の最終年度となる.これまでの二年間は実施計画の通り研究を推進させてきた.現状,本研究の推進に大きな障害は見当たらないが,わずかな量とはいえ高圧のゲスト物質を使用する実験研究であるため安全面には配慮が必要である,最終年度も安全面に配慮しつつ,研究計画通り実施できるよう努めたい.
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