2011 Fiscal Year Annual Research Report
アクティブ遮音壁を用いた患者負担軽減のための病室内の能動音響制御
Project/Area Number |
22760174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木庭 洋介 九州大学, 工学研究院, 技術専門職員 (20380602)
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Keywords | 能動音響制御 / 仮想マイク法 / 遮音壁 / 適応制御 |
Research Abstract |
病室内の騒音レベルは通常の居住空間よりも低いが,それによる入院患者の精神的・身体的負担は健常者に比べて深刻な問題となる.この問題に対し,オフィスなどで使用されるパーティションに能動音響制御システムを組み合わせたアクティブ遮音壁を作成し,ベッド上で安静にしている患者の頭部周辺の騒音低減を行う.本年度は以下の項目について実施した. 1.1350×850×650mmの直方体で一方に窓のある病室を模擬した縮小モデルを用いて,反射や共鳴のある音場での仮想マイク法による騒音低減を試みた.騒音が病室外部から入射することを想定し,騒音源はモデル外部に配置した.このような音場では,仮想マイク法で用いる制御位置の信号を推定するフィルタ(仮想誤差推定フィルタ)をFIR型にした場合,フィルタ長を長くする必要があり,計算負荷が多くなったが,IIR型フィルタを用いた結果,計算負荷を少なくすることができ,また,FIR型では制御不可能な共鳴周波数での制御効果も得られた. 2.仮想マイク法を用いて制御を行う場合,仮想誤差推定フィルタは騒音の入射方向により変化するために騒音源が移動すると制御効果が悪化する.その問題に対し,騒音源位置を複数のマイクロホンを用いることで検出できるという仮定のもと,その位置情報から幾何学的に求められる仮想誤差推定フィルタを用いて制御を行った.その結果,騒音源から直接到達する音に対して,フィルタの事前同定をせずに制御効果が得られることを確認した. 3.フィードフォワード制御で用いる参照信号をフィードバック制御に利用するハイブリッドANCユニットを作製し,1つのユニットを用いた制御実験を行った.その結果,1/3オクターブバンドレベルで中心周波数800Hz以下の帯域ではフィードフォワード制御のみの場合より,1~2dBの騒音低減効果が得られた.今後,このユニットをパーティションに複数取り付けることでより大きな制御効果が得られることが予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病室を模擬した縮小モデルを用いて,反射や共鳴のある音場で仮想マイク法を用いて制御を行う場合,仮想誤差推定フィルタをIIR型にすることが計算負荷や制御性能の面で有効であることが分かった.また,騒音源位置を検出することで,仮想誤差推定フィルタの事前同定をせずに,幾何学的にある程度の精度で制御位置の信号を算出でき,騒音源から直接到達する音を制御できることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では,仮想誤差推定フィルタの事前同定をせずに騒音源から直接到達する音を制御する可能性を得られたが,病室内の騒音低減を考えた場合,反射や共鳴の影響を考慮したフィルタを求める必要がある.そのため,今後は騒音源位置に対する事前同定点を削減し,事前同定点以外では補間を用いて精度よくフィルタを同定する方針で研究を進める.また,当初の目的に無かったが,フィードバック制御とフィードフォワード制御を組み合わせたハイブリッドANCユニットの有効性を基礎実験によって確認できた.今後は複数のハイブリッドANCユニットをパーティションに取り付けたアクティブ遮音壁を作製し,その制御効果を確認する.
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Research Products
(3 results)