2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の機能発現を支える運動学構造のロボット機構学的視点よる理解
Project/Area Number |
22760195
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
有川 敬輔 神奈川工科大学, 工学部, 准教授 (50350674)
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Keywords | ロボット機構 / 蛋白質 / 運動学 |
Research Abstract |
本研究では,タンパク質の構造を「主鎖上の2面角運動によってα炭素間距離を制御するロボットマニピュレータ」として捉える粗視的運動学モデルを用いた外力応答解析を基本とする.本年度は,主として解析ツール群の開発と試験的解析を行った. まず.基本解析アルゴリズムに,マルチサブユニットタンパク質への対応,コンプライアンスの無次元化評価,数値微分の排除,解析可能なタンパク質規模の拡大等,大幅な改良を加え,これを計算機プログラムとして実装した.また,タンパク質の構造の特徴である階層性を扱うためには,解析結果を各残基ごとの局所的な運動としてだけでなく,2次構造,ドメイン,サブユニットといったグループの運動としても捉えることが不可欠と考え,これらのグループ間相対運動をスクリュー運動(スクリュー軸,軸回りの回転,軸方向への並進)として近似するための方法を明らかにした.次いで,いくつかのタンパク質のPDBデータを用いて試験的解析を行った.特に,タンパク質の機能発現過程において典型的なアロステリック効果に注目し,アロステリック特性がよく知られているヘモグロビンの解析を行った結果,ヘムポケットの協調的開閉運動特性,サブユニット間相対運動特性等,同効果に直接的に関係する特性について,計測により明らかにされている特性とほぼ対応した結果が得られた. これらの結果は,運動学モデルおよび解析アルゴリズムの妥当性を示すものであり,多様なタンパク質のPDBデータに対して同様の解析を行い,解析結果をロボット機構学的視点から分析することで,タンパク質の機能発現を支える運動学構造の特徴を抽出できるものと考える.
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