Research Abstract |
粒子状の磁性体を外部磁場で動かすことにより臓器と腹壁の間を移動する小形医用ロボットの開発を通じ,体内での駆動,移動,変形を自在に実現できる磁性粒子流体を開発し,新たな機能材料として確立することを研究目的としている.2011年度では,「(1)多軸磁場発生装置の開発」,「(2)体内移動ロボットの移動原理の考案」について研究を行った.(1)については,2種の電源とホルムヘルツ型のコイルを使用して磁場発生装置2種を構築することを目的とし,大容量のコンデンサを搭載した着磁電源を改良し,電源ごとに同期させて,任意方向のパルス磁場ベクトルを発生させる「3軸パルス磁場発生装置」,正のオフセットを加えた正弦波を直流電源で電流増幅させ,コイルに印加する.電源ごとに同期させて,任意方向の交流磁場ベクトルを発生させる「6軸交流磁場発生装置」について,これら装置が発生する磁場の解析を行った.(2)については,柔軟で変形できる本体が,周囲との接触がある状態ですべりのない移動ができる駆動原理を提案した.この駆動には,ウォータースネークという玩具の仕組みを流用した.その構造は円筒型の水風船であり,円筒外側を握ることで増加する水圧により円筒内側の風船膜が外側に押し出され,外側の膜は内部に巻き込まれ,全体ですべり無しの回転が生じ,やがて把持した部分も押し出され手から離れる.外力による内部の水圧上昇に代わり,内部に入れた磁性粒子に外部磁場を印加し,円筒を内側から押すことで風船膜に内側から外側へと回転が生じ移動する.提案した移動原理の特長として,周囲環境とそれに接する円筒外側にすべりが生じない移動であること,内部の磁性体を外部磁場で引っ張るので移動のためのアクチュエータやバッテリーを搭載やエネルギーの供給が不要で無線駆動であること,弾性膜と液体と磁性粒子により構成されているため柔軟であり変形ができ,自然状態の太さより細い管内や狭わい部への侵入と移動ができる.また構造が単純であるため小形化が可能である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臓器と腹壁の間を移動する小形医用ロボットの開発を通じ,粒子状の磁性体を外部磁場で動かすことで体内での駆動,移動,変形を自在に実現できる移動原理の提案,試作実機による検証までに至っている.この成果をロボットの国際会議に投稿したところ受理され,2012年5月に口頭発表することから,おおむね順調に進展していると判断した.
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