Research Abstract |
本研究の目的は,高粘性液体(数~10Pa・s)中から強磁性の金属磨耗粉を高効率に除去するための磁気分離装置の開発,およびその設計手法の確立を行うことである.分離対象粒子である金属磨耗粉は強加工されてマルテンサイト変態により強磁性を示すため,磁気力による選択的な分離が可能である. 当該年度においては,1Pa・s,および10Pa・sの高粘性流体を媒質として,実験とシミュレーションにより,超電導磁石と磁気フィルターを用いた高勾配磁気分離装置の検討を行った.まず実験的検討については,高粘性流体の模擬試料として,粘度1,10Pa・sのポリビニルアルコール溶液に,強磁性のSUS304粒子を分散させたものを用い,磁気分離装置による分離を試みた.今回開発した装置は,ポンプで超電導磁石のボア内に設置した磁気フィルター部に溶液を流す設計になっている.実験1の結果,超電導磁石を用いた高勾配磁気分離によって,高粘性流体中の強磁性粒子を高効率に分離できることが示せた. 次に,実験を模擬した計算モデルで粒子軌跡シミュレーションを行った.磁場分布と流速分布の解析結果から粒子に働く磁気力とドラッグ力を求め,運動方程式から被分離粒子の軌跡を時間発展で解いた.この結果からワイヤーの粒子捕獲能力を調べ,磁気フィルター1枚あたりの分離能力を算出し,実験と同じ条件での分離率を求めた.その結果,計算結果と実験結果は良い一致を示し,実験結果が汎用的に展開できる結果であることが示せ,分離対象粒子の分離可能性の検討及び分離に必要なフィルター条件など,磁気分離の最適条件を調べられることが示された.
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