2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機液体を用いた多原子分子イオン源の開発と極浅イオン注入への応用
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22760252
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 光明 京都大学, 工学研究科, 助教 (10552656)
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Keywords | イオン注入 / イオン液体 / イオンビーム / イオン源 |
Research Abstract |
平成23年度は、不要イオン同時除去機構を有する含浸型イオン源の作製と放出イオンビームの大電流化を行なうと共に、前年度立ち上げた飛行時間型質量分析計による放出イオンの質量分析を行なった。 多孔質金属材料のNiよりもカーボンの方がよりイオン液体との濡れ性が良好であることがわかったため、含浸型イオン源のエミッタ材料を炭素繊維とすることにより、より安定な放出電流を得ることに成功した。また、含浸材料内にカーボンニードルを複数配置し、エミッタをアレイ化することにより大電流化を可能とした。しかしながら、イオン液体イオンビーム放出の再現性は未だ十分とは言えない。 一方、質量分析により1-butyl-3-methylimdazolium hexafluorophosphate (BMI-PF6)は質量電荷比3000~100000のクラスター、1-ethyl-3-methylim idazolim tetrafluorophosphate (EMI-BF4)および1-ethyl-3-methylimidazolium dicyanamide (EMI-N(CN)2)は質量電荷比100~200の単分子イオンであることを明かとした。また、質量電荷比の大きなBMI-PF6では電荷放出継続による不要イオンの蓄積が遅く、実用的時間範囲では不要イオン同時除去の必要がないこともわかった。一方、EMI-BF4やEMI-N(CN)2では単分子イオンとして放出されるためより短時間で不要イオンが蓄積されるはずであるが、現状の含浸エミッタはBMI-PF6の粘性に最適化されているためEMI-BF4およびEMI-N(CN)2の安定放出に至っていない。 また、ガラス基板へのBMI-PF6イオン照射により低加速電圧条件での基板表面平坦化効果を確認した。これにより、固体表面処理・修飾・改質の応用が気体出来ることが明かとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画と比べ、不要イオン同時除去式含浸型イオン源による単極性イオンの連続放出原理試験が遅れている。この原因は、含浸構造形成の歩留りが低くイオン液体イオンビーム放出の再現性が十分でないことにある。また、主に使用していたBMI-PF6がクラスターとして放出されており質量電荷比が大きいことから、実験時間内で電荷の偏りが進行しにくいことも原因の一つであった。一方、放出イオンの大電流化はエミッタのアレイ化により実現可能であること、また放出イオンの質量分布を飛行時間型質量分析により明らかとすることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
不要イオン同時除去式含浸型イオン源による単極性イオン連続放出の原理実証を行なうため、含浸構造を現状の炭素繊維組込み式から多孔質炭素の一体成形に改めることにより、イオン液体イオンピーム放出の再現性を向上させる。また原理実証には主にモノマーイオンとして放出されていることがわかったEMI-BF4およびEMI-N(CN)2のイオン液体を使用する。以上により安定なイオン放出条件下にてイオンビーム特性や、イオン源真空槽の炭化物汚染評価、またシリコン基板やガラス基板等に対する種々の固体表面照射について検討していく。
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Research Products
(20 results)